数寄なモノ目次録

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その90 藤子不二雄の黒ベエ

藤子不二雄A安孫子素雄)先生がお亡くなりになったみたいです……。
私が小学校高学年の頃から中学生くらいにかけて
『黒ベエ』『魔太郎がくる!!』『ブラック商会変奇郎』
ブラックユーモアの短編などを読んで
もの凄い影響を受けました。
ホラーやオカルト、マグリットエッシャーとか、
ダークな怪奇物が好きになった一因はA先生の影響かな。
私が影響を受けた偉大な方々が次々にお亡くなりになるのが寂しいです。

矢口高雄先生が安孫子素雄先生を追悼――
みたいなのを見て、
えっ! マンデラ効果……とちょっと焦りました。


ギャグ漫画好きだった子供の私が、
初めてブラックユーモアの漫画を読んだのが、
『黒ベエ』だったかな。
不気味で後味の悪いバッドエンドな話なのに、
何か惹きつける魅力があって良いんですよね、ブラックユーモアは。
漫画の中の人物に、もし自分がなったら……と考えると、
悲惨で背筋が凍るんですが、読者という神の視点で見ると笑っちゃう。
ギリシア悲劇に通じるモノが、藤子不二雄Aの『黒ベエ』などのブラックユーモア作品にはある。うそ
私が藤子不二雄A作品の中で、(『フータくん』を除いて)
一番くらいに好きなのが『黒ベエ』。
主人公(黒ベエ)の性格が捻じ曲がっているのが、
藤子不二雄作品の主人公といえば、正ちゃんやのび太って感じの、
元気な男の子や弱虫の男の子ってイメージだったのが覆されたっす。


標題:藤子不二雄の黒ベエ

分類:漫画>ブラックユーモア

■題名:黒ベエ

作者:藤子 不二雄 (藤子 不二雄A)

発表年:1969年~1970年

製作国:日本

評価:S ★★★★★☆

■内容・雑記:
ブラック・ユーモアとは、なんのこと?
そいつは、愉快な破壊。高尚な嘲笑。残虐な諧謔
スリリングに笑わせる、怪人黒ベエとは、だれのこと?
そいつは、藤子不二雄がうみだした、きみの心の影法師。

<登場人物>
黒ベエ:
全身黒ずくめの坊主頭の子供。(シルクハット、ステッキ、白手袋)
目尻が下がり鼻は黒い福助のような顔立ちだが、福ではなく不幸をもたらす。
謎の女の子にのぼせ上がり、プレゼントされた白服を着た(白ずくめの)黒歴史がある。
得意技「影うつし」は、対象の影に同化し操ることが出来る。
「影封じ」は、影の中(壁などに映った影)に対象を封じる。
「影変身」は、対象の形態を変える。
「影移し」は、複数の対象の重なった部分を取り替える。

ハゲベエ:
黒ベエに飼われているハゲタカ。
放し飼いで、エサは自力で狩る。食い意地が汚い。

スズキ・ミチオ:
一見、気弱な性格に見えるが、黒ベエも一目置く実行力の持ち主。
自分を虐めた(危害を加えた)モノに対して手帳に★(黒星)を付け、
良くしてくれた人には☆(白星)を付ける。
黒星が10個溜まると処刑。処刑の記念に必ず魚拓(ネコ拓、犬拓、人拓)を取る。
スズキ・ミチオは、『魔太郎がくる!!』の魔太郎に性格が似ている。
(魔太郎も、手帳に○や×を付けてる)
魔太郎は、スズキ・ミチオに黒ベエの能力を足したようなキャラかな。
中上健次原作で柳町光男監督の『十九歳の地図』って映画で、
新聞配達の主人公が地図に×を付けて、
その家に嫌がらせをするって描写があるんですが、
原作は1974年発表らしいので、『黒ベエ』の方が早い。(何か元ネタがあるのかも?)
藤子不二雄A安孫子素雄)は、
スズキ・ミチオ (鈴木道雄)っていう名前のキャラが好きなのか、
自分(藤子不二雄A)を投影したキャラなのか、身近にモデルになった人物がいるのか、
他作品にもよく出てきます。
同じ『黒ベエ』の「梶一郎の災難」に鈴木ミチオ。
『フータくん』の「タヌキの宴会アラエッサッサーの巻」
夢魔子』の「城」
『不気味コレクション (ぶきみな5週間)』の「串のはいった鞭」
『ひっとらぁ伯父サン』の小池(鈴木じゃないけど)ミチオ。
『ブレーキふまずにアクセルふんじゃった』
――などなど。
まんが道』の満賀道雄とか、藤子不二雄Aは道雄って名前に思い入れがあるのか?

梶 一郎:
眼鏡をかけ口が尖った狐顔(スネ夫顔)。髪形はオールバックで前髪が白い。
黒ベエの靴を踏んだことにより災難に遭う。
『なにもしない課』の天野芳雄。
『恐喝(ユスリ)有限会社』の山下治郎。
『無名くん』の佐木キザオ。
――などなど、似たキャラがよく藤子不二雄A作品に登場する。

池上 ピー太 (ピータン):
女の子みたいな男の子。ピーター (池畑慎之介)がモデルか?

<話>
00. プロローグ
01. ワニ料理
02. スズキ・ミチオの秘密復讐計画
03. おこる卵
04. しごく者 しごかれる者
05. 梶一郎の災難
06. 機械マニア
07. 黒ベエ白ベエになる
08. 車(カー)こそわが命
09. ハゲベエと黒ベエの場合は
10. 石投げ
11. まわるよまわるパチンコ玉が

■雑記・感想:
「おこる卵」は、『コブラ』の古代火星人が作り出した最終兵器を思い起こす。

「しごく者 しごかれる者」は、
新入社員の研修で、兵隊訓練(自衛隊体験入隊みたいなこと)をさせられて、
人格破壊されるって話なんですが、
軍隊でのしごきで、柱に抱きついて蝉のマネをさせたり、
両脇に机があるとこで、一方の机に右手、他方の机に左手をついて、
空中で自転車こぎ(エアサイクリング)させる場面があるんですよ。
それが、山本薩夫監督の『真空地帯』(1952年)と、
福田晴一監督の『二等兵物語』(1955年)の映画にも同じようなしごき場面があって、
軍隊では定番のしごきなのか?
藤子不二雄Aが映画を観て取り入れたのかわかりませんが。
魔太郎がくる!!』の「ニセ教師はイジメの先生だった!!」
でも自転車こぎが出てくる。
社長の息子が逆恨みから、
「このうらみはらさずにはおくものか!!」
と魔太郎みたいなこと言ってます。

「車こそわが命」は、
『黒ィせえるすまん』の「イージー・ドライバー」と「夢のあと」に少し似ている。

「ワニ料理」のヒヒオや、「ハゲベエと黒ベエの場合は」の五郎助とか、
変な一家(一族)の叔父さんが一番ヤバい。
物語の途中から最強キャラが登場するのが、
『用心棒』の卯之助とかのパターン。

黒ベエは、喪黒福造が付き纏う人物に不幸をもたらすのと同じような感じなんですが、
喪黒福造と違うのは、(「おこる卵」「機械マニア」「車こそわが命」では)
黒ベエ自身も酷い目に遭うことがある。

「スズキ・ミチオの秘密復讐計画」
「しごく者 しごかれる者」「梶一郎の災難」「車こそわが命」
「まわるよまわるパチンコ玉が」とかが面白い。

次回に続く最後のコマや、印象的な場面で、
写真を模写したような劇画調の絵になるのが、
出崎統監督の止め絵演出みたいでカッコいい。


子供の頃の私は、漫画の題名(タイトル)を間違って読んでました。
藤子・F・不二雄の『モジャ公(モジャこう)』は『モジャハム』だと思い、
藤子不二雄Aの『まんが道(まんがみち)』は、
柔道、剣道、茶道、華道、などから『まんがどう』だと思ってました。
漢字にルビがふってなかったか、あっても見落としていたので。
でも、さすがに『黒ベエ(くろべえ)』を『こくべこう』とは読まなかったっす。

『黒ベエ』と同じく、藤子・F・不二雄の『モジャ公』も、
1969年から1970年の作品なんですが、
当時の時代背景のせいなのか、それまでの藤子作品と比べると、
(不安や絶望を感じさせる)ブラックで残酷な内容で子供向けとはいえないかな。
でも私は『黒ベエ』と『モジャ公』の二つとも大好き。
モジャ公』と同じく、『黒ベエ』も続きモノの中篇の話が多くて
短編では描ききれない、話に深さや重さがある。


■題名:
黒イせぇるすまん
黒ィせぇるすまん (笑ゥせぇるすまん

作者:藤子 不二雄 (藤子 不二雄A)

発表年:
1968年
1969年~1971年

製作国:日本

評価:B ★未確定

■雑記・感想:
<登場人物>
喪黒 福造:
いらぬお節介を焼き、相手を破滅させる謎のセールスマン。
全身黒ずくめで、黒ベエが大人になったような存在。

<話>
00. 黒イせぇるすまん (※読み切り)
01. ともだち屋
02. 切る
03. 化けた男
04. ザ・ガードマン
05. ナマケモノ
06. チ漢さん
07. 勇気は損気
08. イージー・ドライバー
09. たのもしい顔
10. プラットホームの女
11. 押入れ男
12. ゴルフ入門
13. 手切れ屋
14. 白昼夢
15. 空手道
16. 的中屋
17. 47階からの眺め
18. 夢のあと
19. アルバイト○秘情報

「切る」は、『不器用な理髪師』
「チ漢さん」は、『喝揚丸ユスリ商会』の「請求書の4 ひき逃げ代 99万9000円也」
に少し似ている。


立風漫画文庫の『黒ィせぇるすまん』を買って読んだ時、
藤子不二雄のブラックユーモアの小品だな。
――と私は思ったんですが、
一般人には知られないマイナーな作品で終わるはずだったのが、
笑ゥせぇるすまん』と改題してアニメ化されメジャーな作品に化けるとは……。


私が藤子不二雄の漫画を主に読んでいた時期は、
小学校高学年から高校一年くらいなんですが、
1980年代の週刊少年ジャンプの黄金期だったので、
私の周りの同級生は、中学生になるとほとんど藤子不二雄作品を読まず、
高校生で藤子不二雄などの漫画
手塚治虫石森章太郎水木しげる、などの当時としては古い漫画)
に興味があるのは私くらいでした。
その私も、だいたいの有名な作品を読んでしまったので、
昔の漫画から、今(当時)連載されている流行の漫画へと移行しちゃいました。
今でも藤子不二雄の漫画は好きですが、
感受性が豊かな小学生の頃に読むのがベストだと思う。