「フフフフフフ……」尼僧の黒い微笑
二年くらい前に観て衝撃を受けた前衛映画、
金井勝監督の『無人列島』を目録に。
※「微笑う銀河系三部作」のまだ観てなかった『王国』を観たんで、
二年くらい前に観てもう内容を忘れてる『GOOD-BYE』と共に
ちょっとだけ追記してます。
1960~1970年代の自主制作映画や実験映画や前衛映画
『白日夢 (1964年) - 武智 鉄二』
『とべない沈黙 - 黒木 和雄』
『薔薇の葬列 - 松本 俊夫』
『鉄輪 - 新藤 兼人』
とか、勅使河原宏や寺山修司なんかは、
わからないところもあるけどなんか面白いんすが、
『荒野のダッチワイフ - 大和屋 竺』
とか、若松孝二や足立正生なんかは、
低予算なんで荒唐無稽で女性のヌードやレイプなどの
衝撃性や暴力性で誤魔化している感じがして
あまり面白いと思えないんすが、
そんな作品の中で『無人列島』は映像が面白いし、
イデオロギーや性的なメタファーがなんか異様で面白いっす。
内容は全然わからないけど……。
上記の作品に比べると、
デヴィッド・リンチの作品がいかにわかりやすいか、
予算(お金)をかけ丁寧に制作しているか、と改めて思う。
標題:金井勝の微笑う銀河系三部作 無人列島
分類:映画>邦画>前衛
■題名:
無人列島
GOOD-BYE
王国
監督・脚本:金井 勝 (※出演:『GOOD-BYE』『王国』)
脚本・出演:むささび童子 (※『GOOD-BYE』『王国』)
スタッフ:
富田 雪 (※脚本:『無人列島』 / 出演:『王国』)
山崎 佑次 (※脚本・美術:『無人列島』 / 撮影・美術:『GOOD-BYE』 / 出演:『王国』)
亘 真幸 (※撮影:『GOOD-BYE』『王国』 / 出演:『GOOD-BYE』)
出演:
大方 斐紗子
佐藤 重臣
真壁 勝徳 (※『無人列島』『GOOD-BYE』)
串田 和美 (※『無人列島』『王国』)
岩田 信市 (※『無人列島』『王国』)
堤 雅久 (※『GOOD-BYE』『王国』)
(※下記『無人列島』)
佐沢 博
竹田 都
新井 純
伊東 満智子
金平 ミサ
河西 都子
浅川 鮎子
渡辺 ルミ
佐藤 博
村松 克巳
樋浦 勉
坂本 長利
青木 一子
永田 智
松葉 正男
上条 順次郎
加藤 好弘
(※下記『GOOD-BYE』)
松井 康子
梵魚寺 勝丸
空涙 犬吉
小笠原 清
宝仙華
雲 堂門
田中 茂
(※下記『王国』)
大和屋 竺
桑名 平治
城之内 元晴
佐々木 天
尾形 充洸
井東 清
斎藤 隆
山本 晰也
比田 義敬
萩野 素彦
荻野 アヤ
荻野 直
細井 靖明
大阪 徳
秋山 洋
伊藤 文
多胡 智惠子
李 順子
松本 勲
発表年:
1969年
1971年
1973年
製作国:日本
評価:
A ★★★★☆
C ★未確定
B ★★★△
■内容・雑記:
『無人列島』
逃亡していた日出国(串田和美)は、村の駐在(佐沢博)に捕まり、
ボコボコにされ憔悴しきった状態で教会に連れ戻される。
教会地下の尼僧達による審問会で有罪になった日出国は
白衣の尼僧(河西都子)に鞭打たれ、
女の淫欲と母の子宮の中にいるような状態から逃れると
辿り着いたバラック集落で背中から男の子を産みシャム双生児のようになる。
河原で青年(樋浦勉)が白衣の尼僧に虐殺され鶏を奪われるのを目撃したり、
背中の子供が「ねずみの嫁入り」を読むことにより知識を得て大人に成長し
日出国に反抗するようになる。
日出国はその自分の半身(村松克巳)が邪魔になり殺すことにより自信を取り戻すと、
新聞を美しく貼ることに使命を感じている夫(坂本長利)と
そのことに疑問を感じている妻(青木一子)の住む団地に大家として押し入る。
単純な仕事に疑問を持った団地の妻を日出国は犯し刺殺すると、
団地の妻から五人の畸型児(ゼロ次元)が産まれる。
日出国は畸型児達に追われながら国会議事堂に向かい、
角棒を振り回し立ち塞がる畸型児の一人を刀で切り倒し国会に乱入する。
そこは大衆演劇の舞台のような場所であり、
白衣の尼僧が現れ、日出国に刀を振り回し民衆を扇動するように促す。
乗せられ跳ね上がった日出国は(原爆により)白衣の尼僧に殺され偽りの平和が訪れる。
何を言っているのかわからねーと思うが
私も何を観せられたのかわからなかった……、
頭がどうにかなりそうだった……。うそ
日出国(ひでくに)の名前は、日出ずる国、日本の暗喩だと思うけど、
尼僧達の審問会は極東国際軍事裁判で、白衣の尼僧はアメリカかな。
白衣の尼僧が河原で青年を虐殺するのはベトナム戦争、
西しか向けない日出国と東しか向けない顔に痣がある男のシャム双生児は
東西冷戦とか右翼や左翼のイデオロギー対立のことかな。
背中のシャム双生児を殺した日出国が急に男らしくなり三島由紀夫っぽくなる。
団地の夫婦の食事場面で金嬉老事件の金嬉老のインタビューが流れる。
団地の夫が目の前で妻が日出国に襲われているのに、
そんなことより新聞貼らなきゃ……と現実逃避するのが日本人的。
団地の妻から畸型児が産まれてくる時の音楽が「君が代」だったり、
河原での白衣の尼僧と青年が戦闘している時の音楽がカントリー・ミュージック?だったり、
日出国が民衆を扇動している時の音楽が
ジェームス・ブラウンの「パパズ・ガット・ア・ブランド・ニュー・バッグ」。
雪原から始まり雪原で終わる、
まわりまわって、ねずみの嫁入り的なループ構造になってる。
螺旋階段で白衣の尼僧が日出国を鞭打つ場面とか、
日出国が黒い微笑で団地を見下ろす場面とか、
畸型児達の奇妙な踊りとか映像を観ているだけで面白い。
畸型児達を演じているのは
『にっぽん'69 セックス猟奇地帯 - 中島 貞夫』や
『薔薇の葬列』にも出ている
前衛パフォーマンスアート集団「ゼロ次元」の人達。
『GOOD-BYE』
『無人列島』みたいなのを期待すると肩透かしを食らうかな。
より自主制作映画っぽい荒い作り。
失語症の少年(むささび童子)がラーメン屋へ行くのがループされ、
途中、麗人(松井康子)に出会い胎内回帰。
古地図にある朝鮮半島が大陸と繋がっていない島だったことから、
飛躍して日本から韓国へ突然ワープするみたいな展開だったような。
戒厳令下の当時の韓国の街並みが観れる貴重性はある。
『王国』
人々の朝の通勤という日常で始まり、
人はいかに時に支配されているかを見せる。
編集者が詩人の五九勝丸の家を訪れ原稿を受け取る。
以降、その詩に書かれた意味不明な内容に沿って話しが進む。
五九は目抜き平次(桑名平治)率いるスリ集団や
鳥博士(大和屋竺)に出会い、
時を掌る神クロノス(岩田信市)と対決することに。
スリの集会で、集会場の藁の小屋が燃やされスリ達にも火が燃え移るんすが、
火だるまスタントって普通、
別人のスタントマンが顔を映らないように安全にやると思うんすが、
どー観ても、本人が本当に勢いよく燃えてるんすよ。
火傷してないか心配……。
鳥博士による渡り鳥の体内時計の研究から
「時間からの開放」を学んだ五九は
鳥のアヌスからガラパゴス諸島へ飛ぶ!(意味不明)
んすが、ガチャピンみたいに緑色になった五九が
ガラパゴスゾウガメと獣姦したり、ウミイグアナ?の大群に混ざったりする
マジで八王子からガラパゴスへ行ったの?っていう驚きの展開!
『無人列島』の尼僧の登場や鞭打ち、
宇宙空間で「フフフフフフ……」と黒い微笑をする(パンストを被った)男達の顔、
など『無人列島』の続編っぽい。
押井守作品みたいに、鳥や魚(動物)が表象や直接的に登場する。
『無人列島』で(戦後)日本を現し、
『GOOD-BYE』で日本を脱出して海外(韓国)へ、
『王国』で日本から世界(ガラパゴス諸島)、そして宇宙へ。
――とスケールアップしてるけど、
『無人列島』が映像的にも物語的にも一番面白いと思う。