サイグレアニマン

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好きなもの目録 その262 岡本喜八のああ爆弾

岡本喜八監督は、
庵野秀明監督が(『シン・ゴジラ』に写真出演させるくらい)
リスペクトしていることもあり再評価されているとは思うんすが、
私は20作品以上観てるんすが、
『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』『肉弾』などが好きかな。
座頭市と用心棒』は、座頭市と用心棒という人気キャラ同士の対決なんすが、
キャラ付けが中途半端で、勝新太郎がなんか座頭市らしくなく、
三船敏郎がなんか用心棒らしくないという残念な映画。
(『座頭市』シリーズの他の作品と比べると
座頭市の性格が微妙に違うように感じるし、
座頭市と用心棒の両方を立てようとして失敗してるような……。
興行的にはヒットしたようですが、『座頭市』シリーズの中では凡作かな)
んで、『ああ爆弾』が風変わりなミュージカル喜劇? なんで目録に。

ああ爆弾』の主役・大名大作役の伊藤雄之助を意識する(知る)ようになったのは、
長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』のバスジャック犯が凄い強烈だったからなんすが、
その前に、黒澤明監督の『椿三十郎』で観てたはずなんすが
普通の役だったので憶えてなくて、
川島雄三監督の『しとやかな獣』や、木下惠介監督の『楢山節考』なども観て
癖のある凄い存在感の名優だな。と印象に残ったので――。


標題:岡本喜八氏のああ優雅な映画

分類:映画>邦画>コメディ

■題名:ああ爆弾

監督・脚本:岡本 喜八

音楽:佐藤 勝

出演:
伊藤 雄之助
砂塚 秀夫
中谷 一郎
越路 吹雪
沢村 いき雄
二瓶 正也
天本 英世
重山 規子
北 あけみ
有島 一郎
桜井 浩子

発表年:1964年

製作国:日本

評価:A ★★★★△

■内容・雑記:
刑務所を出所した大名組組長・大名大作(伊藤雄之助)を出迎えたのは息子の健作ただ一人だった。
自分の出所を喜んで迎えるであろう二号(愛人)のミナコ(重山規子)のアパートを訪ねるが、
ミナコの姿は無く、見知らぬ男女が部屋を占拠していた。
組事務所へ向かうが、大名組はミナコのアパートにいた男・矢東彌三郎(中谷一郎)に乗っ取られ、
矢東が出馬する市議会議員選挙の準備で大忙しで、誰も元組長の大名を相手にしない。
自宅に向かうが、そこも矢東のモノになっていて、
裏切り者のミナコを見つけるが、子分のテツ(天本英世)が親分への手土産にとミナコを殺す。
しかし、それは偽装でテツとミナコはできていて大名を騙し二人で逃げる算段。
仕方なく本妻の梅子(越路吹雪)のもとに向かうが、
あばら家住まいで宗教に嵌りお題目を唱えている変わりよう。
刑務所で同室だった縁で子分の盃を受けたいと付いてきた
爆弾作りの名人・田ノ上太郎(砂塚秀夫)に万年筆爆弾を作らせ、
矢東に一泡吹かせようとする大名だったが……。

監獄での狂言から始まり、かなり変なミュージカル映画
伊藤雄之助の後継者は嶋田久作だと思う。


■題名:江分利満氏の優雅な生活

監督:岡本 喜八

音楽:佐藤 勝

出演:
小林 桂樹
新珠 三千代
東野 英治郎
英 百合子
平田 昭彦
江原 達怡
田村 奈巳
横山 道代
中丸 忠雄
ジェリー 伊藤
桜井 浩子
南 弘子
八代 美紀
二瓶 正也
西条 康彦 (西條 康彦)
天本 英世
北 あけみ
松村 達雄
砂塚 秀夫
塩沢 とき
沢村 いき雄
伊丹 一三 (伊丹 十三)

発表年:1963年

製作国:日本

評価:B ★★★△

■雑記:
当時のサラリーマンの日常や、
戦前・戦中・戦後の日本の状況を愚痴っぽく語っている映画かな。
何をしても(世の中や人生が)面白くない
サラリーマンの江分利満(小林桂樹)が
酒場を梯子してバーテンやホステスなどに面白いか尋ねるんすが、
「私は黒犬よ。尾も白くない」
って、バー ナポリの女(塩沢とき)の洒落に弱り吐いている所で
雑誌の編集者と出会い意気投合して文章を書くことになる。
「才能のある人間が生きるのなんて何でもないことなんだよ。
宮本武蔵なんて、ちっとも偉くないよ。あいつは強かったんだ。
本当に偉いのは一生懸命生きているやつだよ。
江分利(私)みたいなやつだよ」とか言ってるんすが、
江分利満はサントリーの宣伝部員でエッセイみたいな小説で直木賞を取る才人で、
父(東野英治郎)も会社の社長になったり
倒産して借金取りに追われたりを繰り返す波瀾万丈の人生を送っているので
一般的な普通の家族の話とはいえない。
江分利が直木賞を取り会社の同僚と高級クラブに行くんすが、
女子社員の泉俊子(桜井浩子)と坂本和子(南弘子)がカルピスを飲んでいるのを見て、
「カルピスってのは恥ずかしいね。初恋の味だからだろうか?
あの□ロ□□(自主規制)のマークの水玉模様の包装紙のせいだろうか?」
とか何にでも難癖を付ける。
映像は色々凝っていて、
江分利と妻の夏子(新珠三千代)の新婚時代の会話を
革靴と草履の描写だけにして『残菊物語』に言及したり、
身に着けている下着の説明で、パンツ一丁で通勤したりする変わった演出。
コーラスの指揮者で音楽を担当した佐藤勝が出演してる。

江分利満氏の優雅な生活』の映画化は、
当初、監督は川島雄三に決まっていたみたいですが急逝したので
岡本喜八になったみたい。
川島雄三版の脚本では江分利満が社宅から一歩も出ない設定らしいんで、
『しとやかな獣』みたいな映画になっていたのかなぁ。