サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その407 鈴木清順の悲愁物語

安倍元首相銃撃事件に衝撃を受けて
ブログの更新を中断してたわけではなく、
折角、はてなブログに移行しようと三ヶ月くらいやったのに
書き込めなくなってやる気を無くしたのもあるんすが、
前から気になっていたケン・ラッセルの『肉体の悪魔』を観たら、
私の好みのツボ(霊感商法的な壺ではない)にピッタリ嵌る凄い映画で、
それからケン・ラッセルの作品を続けてずぅーっと観てたっす。
ケン・ラッセルの作品を、私は観たことあるかもしれないんすが記憶に無く、
ザ・フーの『トミー』を映像化した作品や、
アルタード・ステーツ/未知への挑戦』とか前から観ようと思ってたし、
リック・ウェイクマンサウンドトラックをやっていたりするんで
前からケン・ラッセルの映画には興味があったんすが後回しにしてたっす……。
んで、『ボーイフレンド』『肉体の悪魔』『トミー』『リストマニア
などが特に気に入ったっす。

昔から薄々気付いていたことなんすが、
日本の政治がカルト宗教に毒されていたのが明るみに出たのと関係ないけど、
この頃カルト映画ばかり観てるっす。
ひなぎく - ヴェラ・ヒティロヴァ』
『殺しを呼ぶ卵 - ジュリオ・クエスティ』
『ライフ・オブ・ブライアン - テリー・ジョーンズ
など色々観たんすが、印象に残ったのは『ホドロフスキーのDUNE』かな。
監督がアレハンドロ・ホドロフスキーで、
絵コンテ・キャラクターデザインがジャン・ジロー (メビウス)、
デザインをH・R・ギーガー、特殊効果をダン・オバノン
出演予定がサルバドール・ダリオーソン・ウェルズミック・ジャガー
そして音楽はピンク・フロイドとマグマ……!
という私が好きなものが集結してるんすが、
やはりというか凄すぎて映画化は頓挫……。
メビウスの絵コンテが完成されているんで映画の全容を想像させる。
改めてメビウスが日本の漫画家やアニメーターなどに影響を与えたのがわかる。

前置きが終わって本題っす。
鈴木清順監督の映画を30作品以上観てるんすが、
1980年代以降の作品より、
悪太郎』くらいから『殺しの烙印』までの1960年代中頃の作品が好きなんで、
監督が干されてから十年ぶりの復帰作『悲愁物語』にあまり興味が持てず、
前に鈴木清順作品を色々観ていた時に
悲愁物語』は女子プロゴルファーの話で復帰作として微妙……
みたいな評判を目にしたり、
録画してあると何時でも観れる安心感から後回しにしてたんすが、
最近では『悲愁物語』はカルト映画ってことになってるみたいなんで、
やっとこさ重い腰を上げて観たんすが……、
もっと早く観ればよかった……といつものパターン。
まさか女子プロゴルファーの成功と挫折の物語かと思ったら、
サイコホラーだったとは……。
流石、鈴木清順大和屋竺はぶっ飛んでる。


標題:鈴木清順悲愁物語

分類:映画>邦画>サスペンス

■題名:悲愁物語

監督:鈴木 清順

原案:梶原 一騎

脚本:大和屋 竺

音楽:
三保 敬太郎
とみた いちろう (MoJo

出演:
白木 葉子
原田 芳雄
岡田 眞澄
和田 浩治
仲谷 昇
玉川 伊佐男
佐野 周二
江波 杏子
小池 朝雄
左 時枝
宍戸 錠
野呂 圭介

発表年:1977年

製作国:日本

評価:B ★未確定

■内容・雑記:
ナディア・コマネチをモデルにしていると思われる女子体操選手の
東欧の花イレーナ・チブルスキーが、
引退後は極東レーヨンの専属モデルになることを知った
ライバル会社の日栄レーヨンの社長・井上(仲谷昇)は
企画室長の森(玉川伊佐男)に対抗するよう命じ、
森は国際行動研究所所長でファッション・コーディネーターの
田所圭介(岡田眞澄)と広告代理店の古沢(和田浩治
に話題になるモデルを探すように依頼する。
田所は女子プロゴルフの新人王を獲った桜庭れい子(白木葉子)に目を付け、
彼女の恋人で『週間ゴルフダイジェスト』編集長・三宅精一原田芳雄)に接触し、
桜庭れい子を日栄レーヨンの専属モデルとして売り出すのに
知名度を上げるため日本選手権で優勝するように依頼する。
高木のおやっさん佐野周二)にスパルタで鍛えられたれい子は
見事に日本選手権で優勝し人気者になり
テレビ番組でコーナーを担当するまでになるが……。

物語の始めの三分の一は女子プロゴルフで成功する桜庭れい子の話なんすが、
人気者になったれい子が弟と郊外の高級住宅に引越してからが思わぬ展開で、
近所の主婦・仙波加世(江波杏子)に付き纏われ、
もともと依存体質だったれい子が加世のマインドコントロールにより壊れていく
サイコスリラーやサイコホラーみたいになるっす。
サインを貰って握手しただけの加世のことを憶えていないのに怒り、
れい子のサイン色紙を包丁で切る場面が見所。
加世はれい子と親密になるためれい子の車に当たり屋するし、
夫(小池朝雄)に適当にあしらわれ、
近所の主婦達には変わり者扱いされているんで、
れい子を精神的に支配して、主婦連中の中心になり、
れい子に自分の夫との肉体関係を強要して虚栄心や支配欲を満たす。
れい子と弟の関係も変で、
弟と会話する近所の少女も本当に存在するのか疑問。

才能のある真面目な人間が、
自分勝手な恋人や芸能界や広告業界に使い潰され
ストーカーやカルトに狙われ破滅する悲劇。
燃え盛るテレビが爆発して終わるのもメディア批判なのかも。