サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

気になるもの目録 黒沢清の勝手にしやがれ!!シリーズ

2014年の終わりから2015年の初めくらいに書いた記事を修正して再録。

1990年代後半、『CURE』とか話題になって、
海外(の映画関係者や映画ファンの間)では、
今クロサワといえば、アキラではなくキヨシだ!
それくらい海外での知名度がある。
――みたいなテレビ番組(コーナー)をやっていて、
黒沢清青山真治が、いかに海外で評価されているか。
みたいなのを観て、私は素直に、そんなに凄い監督が日本(邦画)にいるんだぁ。
と思っていたっす。
今でも、日本の文化やスポーツなどに関する海外の反応なんかの記事を読んで、
海外で認められている=凄い!
ってなってしまうのが日本人(私)かな。

それで黒沢清って名前を憶えて、
いつだったか2000年前後に、テレビで深夜に黒沢清特集があって、
『CURE』『ニンゲン合格』と『勝手にしやがれ!! 成金計画』を観たっす。
『カリスマ』も、その頃観たか少し経ってテレビで放送したのを観たっす。
『CURE』が噂に違わず傑作で、『ニンゲン合格』も面白く、
シリーズ最高作品らしい『勝手にしやがれ!! 成金計画』も、
ドタバタ(スラップスティック)で面白かった記憶があるっす。
それから、黒沢清監督作品をテレビなどで25作品以上観てますが、
私的には、『CURE』を超える(または並ぶ)作品は無かったなぁ。と
『CURE』『蛇の道』『ニンゲン合格』『降霊』などが、
私の好きな黒沢清監督作品かな。
同じクロサワだからといって、正直、黒沢清
黒澤明を超えるとか並ぶのは不可能だと思う。


標題:黒沢清勝手にしやがれ!!シリーズ

分類:オリジナルビデオ>ドラマ

■題名:勝手にしやがれ!!
強奪計画
脱出計画
黄金計画
逆転計画
成金計画
英雄計画

監督:黒沢 清

音楽:
TORSTEN RASCH
トルステン・ラッシュ

出演:
哀川 翔
前田 耕陽
大杉 漣
洞口 依子
諏訪 太朗

発表年:1995年~1996年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:

勝手にしやがれ!! 強奪計画』
藤田雄次(哀川翔)と吉行耕作(前田耕陽)の二人は、
便利屋みたいな犯罪(非合法)すれすれの仕事でその日暮らし。
借金の取立ての仕事で、
ヤクザにショバ荒らしと因縁をつけられボコられる雄次。
血だらけで倒れていた雄次を介抱してくれた保母さん(七瀬なつみ)に一目惚れ。
酒、煙草、エロ本を処分して生まれ変わろうと決心した雄次のもとに、
キャバクラのホステスと結婚するからと、耕作が女を連れてきた。
なんと!そのキャバ嬢は雄次が惚れた保母さんだった……。
清純そうな保母さんが、夜は……
ってのじゃなく、病気の父親の手術費用を稼ぐためだった。
雄次と耕作の二人は、保母さんのために大金を稼ごうと、
羽田由美子(洞口依子)と先生(大杉漣)からヤバイ仕事を請け負う。
そこに、保母さんの父親の元担当医(菅田俊)が絡みハチャメチャな展開に――。
出鱈目なコメディーっぽい作品なんで、真面目な突っ込みはアレなんですが……。
物語の前半では、清純で真面目な保母さんが、
後半では、競馬のノミ行為でヤクザに借金して、
クスリの運び屋を任されれば、途中でブツを横取りするしで、
キャラクター設定が破綻している。
ブツ(クスリ)を奪い返そうとするヤクザ役が國村隼で、
カマンベールチーズを茫然と見つめたり、
放り投げられたブツをキャッチミスするなど、
強面なのに愛嬌がある。
最後は、貧乏神の元医者の消息不明だった叔父さんが金持ちで、
そのおかげで保母さんと父親と元医者がアメリカに渡り大団円という、
もの凄いご都合主義。


勝手にしやがれ!! 脱出計画』
ヤクザの組長の娘アスカと付き合っている男の調査をした雄次と耕作の二人。
娘が熱を上げている男・木村を連れてくれば報酬は200万だと組長が言う。
実働しない由美子と先生のピンハネに嫌気がさしていた雄次は依頼を断る。
テレビでオーストラリアは、物価が日本の5分の1だと知った耕作は、
大金を手に入れて、
二人でオーストラリアに行こうと雄次を誘うが乗り気でない様子。
そんな折、ヤクザに追われた木村を偶然助けてしまう雄次。
どん詰まりの日本での生活を捨てて、
オーストラリアに脱出だっ!と木村をヤクザに売り渡す。
金が手に入ったが重い腰を上げない雄次に耕作はイライラ。
数日後、雄次と耕作の部屋に木村が逃げ帰っていた。
「叔父さんがオーストラリアで牧場を経営している」
との木村の言葉に、三人でオーストラリアに逃亡しようという話に……。
しかし木村は恋人の陽子と一緒じゃないと嫌だという――。
出鱈目なコメディーっぽい作品なんで、ストーリーの辻褄合わせを
どーこーうるさく言うつもりはないんですが……。
木村が好きな陽子は、実はアスカの妹で、
陽子は雄次のことが好きになってオーストラリアにも一緒に行くという。
そこにアスカも合流して、みんなでオーストラリアに行くことに。
しかし組(ヤクザ)の追ってが迫り、
雄次達を逃がそうとした芹沢(アスカを庇護するヤクザ)が撃ち殺される!
果たして雄次と耕作の運命は……。
(なんか二人はヤクザにボコられただけで、
木村とアスカと陽子の三人はオーストラリアで幸せに暮らしている)

『強奪計画』と『脱出計画』とも、コメディーっぽいノリなのに、
終盤でヤクザが銃を撃って、突然シリアスっぽくなるんだけど、
最後はまたコメディーに戻り、関係者から手紙やハガキで近況報告があり、
雄次と耕作の二人はいつも通りで、
世は全てこともなしって感じで終わってる。
そんなにアメリカやオーストラリアに脱出したいのか。
金持ちの叔父さんがいて、なんとかなるオチ。
ダンボール箱(空箱)とゴミ袋が必ず出てくる。
女優の顔がみんな微妙。(当時の化粧やヘアメイクなどのせい?)
ケイエスエス(製作会社)は、いつの間に消えたのか?

藤田雄次役の哀川翔は、(他の映画やドラマでも)演技が上手いとかは
私は思わないんですが、キャラが立っている(存在感がある)んで良い。
古い邦画を観ていて、こんな昔から哀川翔が出ているのか……
と思うと池部良だったり、
早朝のラジオから哀川翔の声が聴こえてくるな……
と思うと生島ヒロシだったりしますが。
雄さんの相棒の吉行耕作役の前田耕陽は、
あまり存在感が無いというかキャラが立っていないかな。

『強奪計画』と『脱出計画』を観た感じだと、
ストーリーは、よくある(かどうかは知らないけど)オリジナルビデオだな。と
しかし、映像(ロケーションや画面の構図や奥行き、動き回る人物など)
が凄く凝っていて映画になっている。
さすが黒沢清(と助監督をやっている青山真治)って感じで観て損はないかな。


勝手にしやがれ!! 黄金計画』
『強奪計画』と『脱出計画』の牛乳を飲んでいる雄次(哀川翔)のもとへ、
自転車で耕作(前田耕陽)がやって来るオープニングから、
ビールを飲んで、焼き魚でご飯を食べている雄次のもとへ、
自転車で耕作がやって来るオープニングに変わっている。
あと二人の住処が、木造の二階部屋だったのが、
元託児所だったらしい建物の一階に変わっている。
老人(天本英世)の残した五千万のありかをめぐって、
老人の(銀行強盗)仲間二人と悪徳警官、
老人の孫娘(藤谷美紀)、雄次と耕作の二人組が、
宝の地図を奪い合うドタバタ劇。
見所は、他人の物を勝手に売っぱらう藤谷美紀に、
店の金と物を全て持ち逃げされ、放心状態から
「ないないポンポコリンの何にもない――」
初音ミクさながらに、ネギを持って歌い踊る大杉漣(先生)。
『強奪計画』ではアメリカ、
『脱出計画』ではオーストラリアへの移住を夢見ている二人なんですが、
今回はジャマイカ……。
なんかワンパターンというか、脚本がいい加減というか、
『強奪計画』と『脱出計画』より面白さがダウンしている。


勝手にしやがれ!! 逆転計画』
まったくついてない雄次は、取り立ての仕事に失敗して借金をこさえる。
麻雀や競馬など賭け事で一発逆転を狙うが、大負けですっからかん。
その一方、耕作はつきまくり!
麻雀で大勝ち、福引を引けばハワイ旅行が大当たり!
(人生ゲームでも絶好調!)
雄次は、惚れたタバコ屋の娘(仁藤優子)に、
福引で当てた最新式のウォークマンをプレゼントして仲良くなる。
娘は英会話に興味があり、夢は海外留学。
その娘のため、雄次はハワイ旅行をプレゼントしようと奔走するが無駄に終わり
意気消沈していると、偶然ヤクザの行き倒れに出会う。
ヤクザの持っていたスーツケースの中身を見ると大金が……。
これで人生逆転だ。とネコババするが――以下略。
ストーリー(脚本)が、行き当たりばったりで滅茶苦茶。
『強奪計画』(シリーズ通して)なんかでも、
キャラクター設定が破綻していたんですが、
『逆転計画』も、金に困った雄次が先生の店の売上を盗んだり、
真面目そうなタバコ屋の娘が、大金を目の前にしたとたん競馬に注ぎ込んだり、
金を奪われ取引先から命を狙われるヤクザが、
なぜかネコババした雄次に甘かったり――と適当。
今回、二人が移住を夢見るのはハワイ(とアラスカ)。
雄次がテレビでJリーグを観ていると、
浦和レッズの福田がPKを蹴る瞬間にテレビが壊れるんですが、
きっとアメリの仕業だな。
タバコ屋の娘の父親役で、河原崎建三が出てる。
前作までは、Vシネマっぽく、
ちょっとHな(女の子の裸の)場面が突然意味も無く出てきたんですが、
今作は無かった。
『強奪計画』と『脱出計画』のヒロインが二人とも微妙(な顔)だったんですが、
『黄金計画』と『逆転計画』の藤谷美紀仁藤優子は可愛い。

『強奪計画』のブツ(クスリ)を渡す船員と、
『脱出計画』の密航を手伝う漁船の船長と、
『黄金計画』の強盗仲間二人組の片方と、
『逆転計画』の雄次と耕作らと麻雀を打っている人物、
などシリーズ全作に諏訪太朗が出演してる。


勝手にしやがれ!! 成金計画』
細かい内容とかをすっかり忘れていたんですが、
十年以上前に一回観たことがある。
Wink鈴木早智子が出ていて、自動車でゴミ袋に突っ込む。
首輪をしたチンピラが出てくる。
夕暮れの湖畔でビーチバレーをする。
――などが観た憶えがあったっす。
勝手にしやがれ!!』シリーズ最高作と言われるだけあって、
シリーズの中では一番面白いかも?
『強奪計画』と『脱出計画』も良いんですが、
ヒロイン役の女優的に、鈴木早智子が一番華があるかな。
鈴木早智子自身は感情の起伏に乏しく華がないかな)
ストーリーは前作までと同じような、
ヘロイン(大金)を巡ってヤクザとの追いかけっこ。
前作までは、何百万とか何千万とかのお金の奪い合いだったんですが、
シリーズ終盤ということで、
今回は大盤振る舞いの八億円(相当のヘロイン)を巡ってのドタバタ劇。
まぁ、脚本や設定が出鱈目なんで
東京湾に投げ入れた紙袋が、海水の逆流で本栖湖に流れ着く。
――くらい出鱈目)
見所は、麻薬バイヤーのオッサンと、
湖畔でビーチバレーをする場面の夕暮れの美しさ、とかかな。
毎回、雄次(哀川翔)と耕作(前田耕陽)の二人は、
大金を手に入れたら外国に行きたがるんですが、
今回は沖縄とバリ島。

『強奪計画』と『脱出計画』、『黄金計画』と『逆転計画』、『成金計画』と『英雄計画』と、
二作品まとめて撮っているみたいなんで、
オープニングが二作品毎に違うんですが、
『成金計画』と『英雄計画』は、
家の前でリクライニングチェアに寝ている雄次のもとに、
自転車で耕作がやって来るんですが、
自転車の直角の曲がり方(止まり方)や、
『成金計画』ではクラッカー、
『英雄計画』では水鉄砲で雄次を起こそうとする。
――などマイナーチェンジがある。


勝手にしやがれ!! 英雄計画』
今までのシリーズ作品と違い、
街からヤクザやホームレスを追放して
理想的な社会を創ろうとする青柳(寺島進)と対決する雄次と耕作。
――って話で、ディストピア作品や英雄の帰還を描いた作品っぽい。
シリーズ最後なんで、
群衆ってほどじゃないけどモブシーン(デモ)などで人がたくさん登場するし、
相米慎二ばりの長回しがある。
――など力が入っている。
しかし……、全然面白くない。
シュールでアヴァンギャルドな感じを狙ったのかな?
生真面目な青柳が、
ヤクザ(に憧れる畳屋)を追い出すために、
自分自身の足を銃で撃つ自作自演事件を起こすんですが、
極左や極右、宗教系の人達って、自分達の思想信条のために、
目的を達成するためなら自作自演もかまわない。
――ってのが怖いんですよね。
毎回、雄次(哀川翔)と耕作(前田耕陽)の二人は、
外国に行きたがるんですが、今回は新潟とロシア。

勝手にしやがれ!!』シリーズ全作品にいえるんだけど、
日活アクション映画や
具流八郎(鈴木清順大和屋竺木村威夫田中陽造曽根中生など)
なんかを手本にしているのかもしれないけど、
脚本が酷いというか行き当たりばったりで、
黒沢清監督の作風なのか、肝心なところが説明不足で作品に深みが無い。
Vシネマ(オリジナルビデオ)作品だから、ストーリーなんかどーでもよく、
映像で遊ぶ(一般映画を撮る時のための練習)感じ。

シリーズ全作の音楽担当の
トルステン・ラッシュって人の音楽が、
シンセサイザーゲーム音楽って感じで安っぽい。


ある日(ある日)森のなか(森のなか)
クマさんに(クマさんに)出会った(出会った)
花咲く森のなか(花咲く森のなか)
クマさんの(クマさんの)その手に(その手に)
きれいな(きれいな)リボンが(リボンが)
ヒラヒラヒラヒラと~(ヒラヒラヒラヒラと~)
リボンを(リボンを)落とした(落とした)
お嬢さん(お嬢さん)よろこんで(よろこんで)
二人はなかよし(二人はなかよし)