サイグレアニマン

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好きなもの目録 その278 團伊玖磨の夕鶴

作曲家の團伊玖磨は今年4月7日で生誕100年ということで、
NHK-FMの『クラシックの迷宮』
「▽團伊玖磨の軌跡 ~生誕100年に寄せて~」
が放送されたのを聴いたので。
團伊玖磨の祖父は、三井財閥の総帥・團琢磨。
諸井三郎や芥川也寸志とか日本の作曲家は資産家や名家出身の人が多いのかな。
まぁ、お金持ちじゃないとクラシック音楽の道に進むのは大変だと思いますが。
映画『世界大戦争 - 松林 宗惠』のサントラから
第三次世界大戦」「世界最後の日」「エンディング」が放送されたんすが、
在シリアのイラン大使館空爆などに対する報復で、
イランがイスラエルに対してドローン攻撃機弾道ミサイルで直接攻撃してる……。
世界は、日本は、来年のお正月を迎えることができるのか?
君は生き延びることができるか?


NHK-FMの『クラシックの迷宮』2018年5月27日の放送で
「ラジオドラマ「夕鶴」~歌劇「夕鶴」の起源をさぐる~」
を聴いたのをメモ。

NHK-FMの『ベストオブクラシック』
2018年3月22日と4月4日の放送で
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団演奏会の
歌劇「夕鶴」を聴いていたんですが
(ラジオドラマ「夕鶴」を聴いた後に、
歌劇「夕鶴」を録音してたのをもう一回聴き直したっす)
ラジオドラマと歌劇の脚本というか歌詞(台詞)がほぼ同じだったっす。
ラジオドラマ「夕鶴」は、歌劇「夕鶴」の雛形(プロトタイプ)かな。
与ひょうが傷ついた鶴(つう)を助け、
恩返しのため人間の女性に姿を変えた鶴が押しかけ女房になる前段階とか飛ばして、
仲睦まじい(与ひょうとつう)夫婦だったが
悪人(惣どと運ず)に唆され
金に目が眩んだ与ひょうがつうに織物(鶴の千羽織)を強引に織らせ、
その場面を約束を破って見てしまいつうが去っていく二日間の話。

「夕鶴」というか鶴の恩返しの話は、
私が小学生の頃に教科書か『まんが日本昔ばなし』なんかで知ったと思うんすが、
「夕鶴」の登場人物の名前と親友のあだ名が同じだったので記憶に残ったっす。
んで『ガラスの仮面』を初めて読んだ時、
紅天女」の月影千草と尾崎一蓮の関係が、
「夕鶴」の山本安英木下順二の関係をモデルにしてるんだなと思ったっす。


標題:木下順二團伊玖磨の夕鶴

分類:ラジオ>ラジオドラマ

■題名:ラジオドラマ「夕鶴」

名前:木下 順二

作曲・指揮:團 伊玖磨

演出:
岡倉 士朗
梅本 重信

声優:
山本 安英
宇野 重吉
清水 将夫
加藤 嘉
大阪放送子供会

音楽:大阪放送管弦楽団

放送年:1949年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:
1949年4月27日か5月6日、NHK大阪放送局の制作で放送。
声優陣は山本安英が客演していた劇団民藝が主体。

木下順二山本安英のために書いた戯曲「夕鶴」を発表したのは『婦人公論』1949年1月号。
ラジオドラマ「夕鶴」は、舞台での上演に先駆けて戯曲「夕鶴」をそのまま演っている。
團伊玖磨が音楽を担当したラジオドラマの「夕鶴」は、
オペラ(歌劇「夕鶴」)の発表より三年早い。

演出家の岡倉士朗の「夕鶴」の解釈は、
鶴の化身のつうと夫の与ひょうには欲得抜きの純粋な愛があったが、
つうが労働して作る毛織物に高値がつくことで
資本主義の利益追求のメカニズムにつうと与ひょうが組み込まれて
愛が欲得ずくになって家庭という愛の共同体が崩壊してしまう。
日本近代の主産業は繊維産業(軽工業)であり、
敗戦を経て戦後も日本を復興させていく主産業の一つは繊維産業であり、
つうというのは搾取されてずたぼろにされる繊維産業の労働者階級の象徴であり、
つうの最後の名台詞
「私はもう人間の姿をしていることが出来ないの……」
とは、マルクス主義の人間疎外のことをいっている。
ヤマトタケルの白鳥伝説が死を象徴しているように、
つうが最後に空に帰るのは、この世にもう逃げ場がない追い詰められての自殺。
一方、人間を金の亡者に変えてしまう資本主義の象徴が運ずと惣ど。

戯曲「夕鶴」は、日本の古い昔話ではなくて資本主義批判の寓話で、
戦後の左翼的な新劇運動の中で受けた。
与ひょうがつうの機織を覗き見して秘密を探ることで信頼が壊れていくのは、
管理社会、監視社会、治安維持法憲兵・秘密警察、密告といったことと関係がある。
片山杜秀談)


分類:音楽>クラシック>オペラ

■題名:歌劇「夕鶴」

名前:木下 順二

作曲:團 伊玖磨

歌:
腰越 満美
小原 啓楼
谷 友博
峰 茂樹

音楽:
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
江東少年少女合唱団

指揮:高関 健

録音年:2017年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:
2017年9月30日、東京・ティアラこうとう大ホールで収録。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第50回ティアラこうとう定期演奏会 オペラ「夕鶴」(演奏会形式)。

歌劇「夕鶴」は、團伊玖磨の代表作であり日本を代表するオペラで
国内・国外で800回以上演奏されている。
第1部が一日の出来事で1時間25分くらいで、
第2部が翌日の出来事で30分足らずと全体としてのバランスが悪い。

 

「夕鶴」を、今日の(現代社会に)読み替え演出すると、
運ずと惣どはグローバリズム時代の資本家、
つうは契約社員とか時間外労働を強いられる底辺の女性労働者、
与ひょうは没落する中産階級――(片山杜秀談)
らしいんすが私的には、
運ずと惣どはネット時代の転売ヤーや動画の個人特定、
つうはエロいイメージビデオを強いられる地下アイドルとか
ライブチャットや個人撮影されていたネットアイドル
与ひょうはビットコイン投資家――とかかな。

つうは織物(資産)が作れる自分を
与ひょうにとって手放せない価値ある存在だと思わせ、
普通の生活をするのに十分な資産を与え、
働かないで二人でラブラブの生活を送るはずだったのが裏目に。
与ひょうはバカなんで、つうは正直に鶴の化身だって打ち明ければ、
そんなこともあるかな……と受け容れたと思うんすが。
仕事(や趣味)を男から取り上げ、
自分だけを愛して他のモノに目もくれるなってのも悪かったかも。うそ

子供たちがつうを「おばさん、おばさん――」
って呼んで遊びに誘うんすが、
現代なら「おねえさんでしょ!」って訂正するな。