サイグレアニマン

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好きなもの目録 その311 石井輝男のならず者

石井輝男監督の『ならず者』を観直したっす。
エキセントリックな作品が多いイメージの石井輝男作品の中では
あまり奇をてらってない正統派な作品なんですが、なんか好きなんすよね。
今年はヘンリー・マンシーニの生誕100周年なんすが、
『ならず者』で冬のリヴィエラ……じゃなくて、
クラブ・リヴィエラのダンス場面で「ピーター・ガンのテーマ」っぽい曲が流れてた。
1月に「新東宝【公式】チャンネル」でやってた石井輝男監督のデビュー作
『リングの王者 栄光の世界』を観たんすが(もう内容を殆ど忘れてるけど)
凄い正統派な作品で驚いたんすよね。
んで、『ギャング対ギャング』ってのも観たんすが、
これも三田佳子が可愛くてけっこう面白かったんすが、
同じ鶴田浩二主演で公開年も近い
『人生劇場 続飛車角 - 沢島 忠』を「東映シアターオンライン」で視聴したんすが、
これと比べると監督の演出が全然違っていて面白い。
『人生劇場 続飛車角』は鶴田浩二が出所(登場)するまでの前フリが長いのに、
『ギャング対ギャング』は鶴田浩二がすぐ出所してすぐ襲撃されるんすよ。
石井輝男監督ってスタイリッシュでスピーディーだなと改めて思う。
後年には粗が目立つようになるけど。


石井輝男監督の映画をこれまで30作品くらい観たんすが、
カルト映画で有名な
『徳川女系図
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
『直撃! 地獄拳 大逆転』
なんかのイメージでキワモノやゲテモノ映画を撮る監督だと思ってたっす。
東宝時代や「異常性愛路線」前の東映作品を観ると
スタイリッシュでスピーディーな、まだまとも(普通)な映画を撮ってる……かな?
『ならず者』『御金蔵破り』『網走番外地』シリーズの頃も面白いし。

在りし日の香港とマカオを偲んで『ならず者』を目録に。


標題:石井輝男のフィルムノワール

分類:映画>邦画>ピカレスク

■題名:ならず者

監督:石井 輝男

音楽:八木 正生

出演:
高倉 健
丹波 哲郎
南田 洋子
三原 葉子
加賀 まりこ
杉浦 直樹
安部 徹
江原 真二郎
今井 健二
鹿内 孝
高城 丈二
高見 理紗
赤木 春恵

発表年:1964年

製作国:日本

評価:A ★★★★○~B ★★★★くらい

■内容・雑記:
殺し屋の南条(高倉健)は、日本から香港に仕事(殺し)で呼ばれる。
無事仕事を片付けホテルに戻ると、部屋には女の死体が……
そして外からパトカーのサイレンが迫る。
依頼主に嵌められたのだっ!
悪党だと思い殺した男は香港の風紀取締り長官で、
死体の女はその娘だという。
阿漕な殺しをしない信条の南条は自分を騙した依頼主に復讐を誓う。
逃走中に偶然、麻薬を手に入れた南条に明蘭(三原葉子)が近づき
ボスの蒋(丹波哲郎)と引き合わせる。
南条は麻薬を安ホテルのメイド小紅(高見理紗)に預け、
ブツと交換に情報を教える条件だったが、
間に入った明蘭がブツを持ち逃げ小紅は死ぬ。
それを知らず南条は依頼主の毛(安部徹)を追って横浜へ。
マリ(加賀まりこ)から売春組織のことを聞き出し、
毛を追ってまた香港に戻る南条。
そこで小紅が死んだことを知り、
その怒りをホテルの強欲マダム(赤木春恵)に八つ当たり。
売春組織を追ってマカオに向かった南条はカジノで情報を仕入れ、
偶然、仕事でマカオに来ていた蒋に会う。
南条がブツを持ち逃げし明蘭をかどわかしたと思い込んでいる蒋だったが
拳と拳で語り合うことにより誤解が解け明蘭の裏切りを知る。
二人は再会を約束し、南条は毛を捜しに、蒋は明蘭を始末しに行く。
南条を付回す捜査官の広上(杉浦直樹)をまくため偶然逃げ込んだアパートの部屋に
小紅の友人・秋子(南田洋子)がいた。
秋子は売春組織によって横浜から香港、マカオへと連れてこられたのだ。
病んで日本で死にたいという秋子を助け、
日本に連れ帰る約束をした南条は
毛に復讐するため警官が待ち伏せる街に向かう。

南条は『修羅雪姫』みたいに刑務所産まれで、
昼間っから女がベッドで寝ているのを見ると蕁麻疹がでる殺し屋。
蒋が裏切った明蘭を
ショパンの『ピアノソナタ第2番 変ロ短調 作品35 第3楽章「葬送」』
を銃身で鍵盤を弾きながら殺す場面がカッコイイ!
最後、港で南条を待つ秋子の横を
刺されて瀕死の南条を乗せたパトカーが通り過ぎるのが切ない。
秋子役の南田洋子が、(他の作品に出演している時より)なんか艶かしい。
当時の香港やマカオの名所だけではなく裏通りやスラム街が観れる。
逆に横浜は景観が一場面くらいで、あとは室内中心。

『ならず者』は新東宝の「地帯(ライン)シリーズ」などの集大成って感じ。
『女体棧橋』での、東京発香港ルートの国際買春組織。
『黒線地帯』での、
ホテルに見知らぬ女がベッドで死んでいて罠に嵌められる。
『黄線地帯 イエローライン』での、
極悪人だという男を殺すが実は神戸税関長(役人)で
報酬の代わりにパトカーを遣され嵌められる殺し屋。
ホテルのマダムががめつい。
逃げるのに女が一緒だと役に立つ。
――など設定が似ている。

ジョン・ウーも若い頃に『ならず者』を観て影響を受けたみたいっす。
『東京ギャング対香港ギャング』は観た事ないんすけど、
同じ香港を舞台にした『神火101 殺しの用心棒』を数年前に観たんすが、
駄作だったというイメージだけでほとんど記憶にない。