野村芳太郎監督の『震える舌』を「松竹シネマPLUSシアター」で
久しぶりに観直したんすが、それほど書くこと思いつかなかったっす。
『震える舌』は、ホラー映画やトラウマ映画として有名なんで、
初めて観る前は凄く期待したんですが、
確かに『エクソシスト - ウィリアム・フリードキン』を
難病(破傷風)との闘いに置き換えたような壮絶な映像で怖いんですが、
物語は家族愛や闘病の話で真面目なものなんで
野村芳太郎監督の『影の車』『砂の器』『八つ墓村』『鬼畜』『疑惑』
などの作品よりはあまり面白くないかな。
観て思ったことは、
北林谷栄の年老いた母親の言動が実際にいる母親の言動みたいな演技で流石。
破傷風で神経が過敏になっているのに、
嫌がらせのように小児科の大部屋の隣の部屋にする。
破傷風になったまーちゃんの演技が壮絶なんすが、
口内にチューブを入れられたり、心臓マッサージされたりするのが
子役の少女が大丈夫なのか心配になる。
前歯の乳歯を抜く場面が一番くらいに怖い。
今は医療ドラマとか沢山観たので教授の立場がなんとなくわかるんですが、
教授の宇野重吉は最初と最後に診察するだけかい? と前は思ってた。
芥川也寸志の音楽
(「無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 - ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」と
小熊達弥のシンセサイザー)が良い。
新しい千円紙幣の肖像が北里柴三郎なんですが、
北里柴三郎は破傷風菌の純粋培養に成功したとか。
チョコパン食べたい。
子供にとって破傷風と同じくらい恐いのが岩下志麻なんで『鬼畜』を。
野村芳太郎監督の松本清張原作の映画化作品はどれも重厚で面白いんですが、
私は『影の車』がなんか好きで、
それと対というか表裏みたいな『鬼畜』も目録に。
大人に子供たちが殺される……。
オス熊が子連れのメス熊を発情させるため小熊を殺すことってあるし、
悲しいことに人間でも、義親や親の愛人に殺される連れ子っているんですが、
そんな連れ子に対する虐待を扱った作品。
分類:映画>邦画>サスペンス
■題名:
影の車
鬼畜
監督:野村 芳太郎
原作:松本 清張
脚本:
橋本 忍 (※『影の車』)
井手 雅人 (※『鬼畜』)
音楽:芥川 也寸志
撮影:川又 昂
出演:
岩下 志麻
小川 真由美 (小川 眞由美)
(※下記『影の車』)
加藤 剛
岩崎 加根子
滝田 裕介
近藤 洋介
永井 智雄 (※写真のみ?)
芦田 伸介
稲葉 義男
浜田 寅彦
野村 昭子
川口 敦子
谷 よしの
他
(※下記『鬼畜』)
緒形 拳
蟹江 敬三
穂積 隆信
大滝 秀治
加藤 嘉
田中 邦衛
江角 英明
三谷 昇
大竹 しのぶ
浜村 純
梅野 泰靖
鈴木 瑞穂
山谷 初男
他
発表年:
1970年
1978年
製作国:日本
評価:A ★未確定
■内容・雑記:
『影の車』
旅行代理店に勤める浜島幸雄(加藤剛)は、通勤バスで偶然、
生まれ故郷・千倉での昔馴染み小磯泰子(岩下志麻)と再会する。
泰子は六歳になる一人息子・健一を抱える未亡人で保険外交員をしている。
幸雄の妻・啓子(小川真由美)は、団地でフラワー教室を開き婦人会に忙しく
幸雄のことはほったらかしなので、
幸雄の住む団地から歩いていける距離の一軒家に住む泰子のもとに足繁く通うようになる。
幸雄と泰子は不倫関係になるが、健一は幸雄にいっこうに懐かない。
幸雄は健一に自分の子供の頃を重ね、
いつしか健一に殺されるのではないかと被害妄想に囚われる。
野村芳太郎監督の『震える舌』は、『エクソシスト』みたいなホラー要素があるんすが、
『影の車』もなんかホラーっぽくて、健一が『オーメン』の悪魔の子ダミアンっぽい。
『オーメン』の影響を受けてるのかと思ったら『影の車』の方が数年早いけど。
浜島幸雄がガス漏れしている家に閉じ込められ、
カーテンを開けると、そこに健一がブランコに乗っていたり、
包丁で木を削っていたりするのが凄い恐い。
浜島幸雄は母子家庭に育ち、六歳の頃の幸雄が嫉妬から
母(岩崎加根子)と親密なおじさん(滝田裕介)を事故死させた暗い過去があるんで、
健一の寝ている隣の部屋で母親と乳繰り合っている自分も
相手が子供だからとはいえ殺されかねない! と疑心暗鬼に。
健一が本気で幸雄に殺意を持って行動していたのかは不明。
いなくなればいいのに……とは思ってただろうけど。
フラワー教室のオバサン連中の世間話で、
シャロン・テート殺し(殺害事件)や『ローズマリーの赤ちゃん』や
三億円事件の話題が出る。
浜島幸雄の子供の頃の回想場面や故郷の千倉の場面は、
3色分解とレリーフ効果を合わせた多層分解の映像効果を使ってるみたい。
『鬼畜』
印刷屋の竹中宗吉(緒形拳)は、羽振りが良かった頃に
妻・お梅(岩下志麻)に隠れて料理屋の女中だった
菊代(小川真由美)を妾に囲い子供も三人産ませたが、
印刷屋が火事になり再建のため金欠状態に陥り菊代に手当てを払えない。
痺れを切らした菊代は子供三人を連れ印刷屋に乗り込むと
お梅に宗吉とのことを洗いざらいぶちまけ子供達を置き去りにして行方不明になる。
お梅の宗吉や菊代に対する怒りが子供達に向かい酷い虐待を加えるようになり、
いつしか宗吉も子供達が邪魔になり……。
宗吉と菊代の子供は、長男の利一、長女の良子、次男の庄二の三人なんですが、
利一は「ガッチャマンの歌」をよく歌ってるんすが、
『かもめ食堂 - 荻上 直子』で、フィンランドのオタク青年の豚身昼斗念が
「ガッチャマンの歌」を歌ってるのを観て
アニメの『科学忍者隊ガッチャマン』が好きなんだな……と単純に思ったんすが、
ひょっとして『鬼畜』を観て「ガッチャマンの歌」を憶えたのかも。うそ
弟はきっと星になったんだ(育児放棄の衰弱死)
妹はきっとお金持ちにひろわれたんだ(東京タワーに置き去り)
父ちゃんはきっとぼくを殺せないよ(毒入りパン&岸壁から落とす)
リイチちゃん大ショック!
最後、利一は自分を殺そうとした宗吉を「父ちゃんなんかじゃないやい!」
と否定するんですが、健気に父親を庇ったのかな……と思ったんすが、
脚本家的には自分を捨てた父親への恨みと拒絶らしいっす。
『砂の器』で、本浦千代吉が和賀英良のことを
「そ、そんな人、知らねぇ!」って息子のことを庇い否定するのとは大違い。
長男の子役に対する折檻や長女の子役に頭から洗剤ぶっかけ、
次男の一歳半の子役の口にご飯を強引に詰め込む岩下志麻の演技?が凄いんすが、
昔の映画やドラマって今では絶対出来ないような無茶な事を役者や子役にやらせるよなぁ。
当初、竹中宗吉役には渥美清を考えたみたいですが、
実現してたら『男はつらいよ』のタコ社長みたいになってたかも。うそ
野村芳太郎監督作品は、空撮や遠景からズームとか海岸や岸壁とか
鉄道なんかがよく出てくるのが特徴かな。
『影の車』では、岩下志麻は子持ちの未亡人で小川真由美は子なしの妻で、
『鬼畜』では、岩下志麻は子なしの妻で小川真由美は子持ちの妾と立場が逆になっている。
岩下志麻は『影の車』では優しく子煩悩で色っぽい女性だったのが、
『鬼畜』では鬼や夜叉の如くの更年期障害のヒステリー女性って感じで、
小川真由美は『影の車』では文化や社会運動に熱心な進歩的な女性だったのが、
『鬼畜』では子供を見捨て宗吉の他にも男がいたかもしれない身持ちが悪い女性になってます。
『影の車』の健一と『鬼畜』の利一の二人とも落書きしてるんすが、
利一がお梅のことをおにばば(オニババ)に描いているんで、
健一もネズミとかの絵じゃなく浜島をダメおやじにして描けばよかったのに。
健一は浜島に猫いらず入りの饅頭を食べさせようとして、
利一は宗吉に青酸カリ入りのパンを食べさせられようとする。
健一は紅葉狩りで車内に一人ぼっちで残されるんすが、
『鬼畜』の長女・良子も東京タワーの展望台に置き去りにされて、
エレベーターに乗り込む宗吉の方を振り返る良子の顔が忘れられないんすが、
幼い子供が一人取り残される恐怖や不安は大変なものだろうなぁ。
健一は六歳の設定で、
利一も六歳なのに交通機関などの料金を誤魔化すために五歳と偽っているみたいなんですが、
『オーメン』の頃のダミアンも五歳みたいなんで、
五、六歳の子供をあまくみてると痛い目に遭うかも。