数寄なモノ目次録

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好きなもの目録 その396 原作松本清張作品 黒い画集

みうらじゅんさんのラジオ番組なんかを聴いていると
よく松本清張が取り上げられるんすが、
みうらさんと言えば東映ピンキー・バイオレンスみたいなのが好みなのかな
と勝手に思ってるんすが、
その対極ともいえる松本清張・原作の映画も好きってのが
なんか不思議に感じるんすが、
実際に自分が松本清張・原作の映画を観てみると面白くて納得する。


標題:黒い画集 ある松本清張の映画

分類:映画>邦画>サスペンス

■題名:黒い画集 あるサラリーマンの証言

監督:堀川 弘通

原作:松本 清張

脚本:橋本 忍

音楽:池野 成

撮影:中井 朝一

スタッフ:恩地 日出夫 (※助監督)

出演:
小林 桂樹
原 知佐子
中北 千枝子
織田 政雄
菅井 きん
三津田 健
西村 晃
平田 昭彦
小栗 一也
西條 康彦
中村 伸郎
八色 賢典
児玉 清
江原 達怡
小池 朝雄

発表年:1960年

製作国:日本

評価:B ★★★☆

■内容・雑記:
繊維会社の課長・石野貞一郎(小林桂樹)は、
江分利満氏みたいな典型的サラリーマンだが、
部下の梅谷千恵子(原知佐子)と不倫している。
会社の帰りに千恵子のアパートで逢瀬を楽しんだ後、
千恵子に見送られて駅に向かい歩いていると、
自宅の近所に住む保険の外交員・杉山孝三(織田政雄)と出会い
咄嗟に挨拶をしてしまう。
家に帰り、妻子には映画を観てきたと嘘をついたが、
心配なのは杉山の妻(菅井きん)を通じて
映画館や通勤範囲と関係のない千恵子の住む西大久保にいたのが妻にバレることだった。
後日、会社に刑事(西村晃)がやって来て、
西大久保で杉山に会ったか尋ねられたが、
石野は会社や妻に不倫が露見する恐れを感じ会っていないと嘘をつく。
杉山は向島の殺人事件の容疑者として取調べを受けていて
犯行時間には石野と会っているとアリバイを主張していたのだ。
んで、石野には杉山が犯人じゃないってわかっているけど、
不倫がバレて会社での地位や家庭が壊れるのが嫌で、
杉山に会ってないと完全否定していて今更後に引けないんで、
杉山が冤罪で死刑になってもしょうがないかな……と、
千恵子には引越しさせ、自分は観てもいない映画の内容を暗記するのだった。

千恵子の新しい引越し先のアパートには、
学生の森下(児玉清)が住んでいて、友人の松崎(江原達怡)が入り浸っていて
二人は千恵子と仲良くなる。
千恵子に竹田部長(中村伸郎)の甥・小松(八色賢典)との縁談が持ち上がり、
杉山のことがあってから仲がギクシャクしていたので石野は別れることにしたが、
金に困っている松崎が千恵子と関係し、不倫をネタに石野から金を巻き上げようとする。
全てを清算するため、松崎の待つ森下の部屋に出向いた石野がそこで見たものはっ!

石野が観てないのに観たことにした映画が、
『西部の嵐』『パンと恋と夢』で、
本当に観たのが
夜ごとの美女』『お嬢さん、お手やわらかに!』
って映画みたい。

石野が千恵子と別れ、これからは家庭を大事にしようとする場面の直後に、
杉山の死刑判決とか、
森下の部屋に向かうタクシーの中で、
少しくらい遅れても大丈夫みたいな余裕をかまして大惨事とか、
『黒ィさらりぃまん』「ココロのスキマ、お埋めします」
って感じのブラックユーモア。

『霧の旗』みたいに、弁護士になってくれなかった逆恨みから、
弁護士の愛人のアリバイを否定するとかじゃなく、
『密会 - 中平 康』みたいに不倫がバレるのが嫌で状況が悪化していく感じかな。
ちょっとしたことで係わり合いになりたくないから嘘をつくのは誰でもあるんすが、
「会社も地位も無い、家庭も目茶目茶だ……」になるんで
他人事と思えずちょっと恐い映画っす。


■題名:黒い画集 ある遭難

監督:杉江 敏男

原作:松本 清張

脚本:石井 輝男

音楽:神津 善行

出演:
伊藤 久哉
松下 砂稚子
児玉 清
香川 京子
土屋 嘉男
天津 敏
和田 孝

発表年:1961年

製作国:日本

評価:C ★★◎くらい
(※評価:C にしてますが、山や自然、登山が好きなら
評価:B 以上の出来だと思う)

■内容・雑記:
銀行員の江田昌利(伊藤久哉)と岩瀬秀雄(児玉清)と浦橋吾一(和田孝)の三人は、
休日を利用して北アルプスの夏山登山に出かける。
登山初心者の浦橋のためにわざわざ寝台車にしたのに、
山に登り始めると経験者の岩瀬の体調が悪くなり、
天候も悪くなり思うように運ばない。
三人は遭難してしまい岩瀬が亡くなる。
岩瀬の姉・真佐子(香川京子)は、
弟が亡くなり初心者の浦橋が生き残ったことに不審を感じ、
江田と浦橋が示し合わせ銀行の不正を告発しようとした弟を殺したのではないかと疑う……うそ。
真佐子は不審に感じただけで、
浦橋が登山専門誌『岳人』に遭難の詳しい状況を寄稿したのを読み納得し、
弟を弔うために遭難現場に行きたいのだが自分は無理なので
従兄弟の槇田二郎(土屋嘉男)を案内してくれないかと江田に頼む。
江田と槇田は北アルプスの冬山登山に出かけるが……。

江田と浦橋が不正を隠すため岩瀬を始末したのかと思ったら、
岩瀬と江田の妻(松下砂稚子)が不倫していた恨みから
江田が偶然と見せかけた作為と可能性の上に立った計画で
岩瀬を追い込んで死ぬように仕向けたみたい。
しかし巻き込まれた、初心者なのに遭難して助かる浦橋は凄い……文才もあるし。
江田と槇田が鹿島槍ヶ岳で対峙する場面でピッケルでの殴り合いが始まると思ったっす。

NHKラジオ第1の『石丸謙二郎の山カフェ』の
2020年6月27日「映画で旅する山」で
『黒い画集 ある遭難』が紹介されてたんすが、
北アルプスの夏山や冬山の景色が美しく、
観ているだけで自分も山を登っている感覚になる映画かな。


■題名:黒い画集 第二話 寒流

監督:鈴木 英夫

原作:松本 清張

音楽:斎藤 一郎

出演:
池部 良
新珠 三千代
平田 昭彦
荒木 道子
小川 虎之助
中村 伸郎
志村 喬
北川 町子
小栗 一也
西條 康彦
宮口 精二
浜村 純
丹波 哲郎

発表年:1961年

製作国:日本

評価:C ★未確定

■内容・雑記:
銀行員の沖野一郎(池部良)は、
大学の同窓で常務の桑山英己(平田昭彦)の引き立てにより
安井銀行池袋支店長に抜擢される。
取引先の料亭の女将・前川奈美(新珠三千代)と不倫関係になった沖野は、
病弱な妻(荒木道子)と別れ奈美との再婚を考えるが
銀行を辞めることになる将来の不安から踏み出せない。
女癖が悪い桑山常務が奈美に一目惚れし、
邪魔な沖野を地方の宇都宮支店に左遷する。
妻が自殺未遂をしてから態度が冷たい奈美に不審に感じた沖野は、
桑山常務と奈美の関係を探偵(宮口精二)に探らせ、二人が密会を重ねていて、
奈美の料亭の支店の購入のための資金が
桑山常務の力により銀行から不正融資されていることを知る。
その証拠を総会屋の福光喜太郎(志村喬)のところに持ち込み、
株主総会で追求してもらい桑山常務を失墜させようとする沖野だったが……。

大和田常務に倍返しできなかった半沢直樹って感じの作品。
銀行内に渡真利みたいな味方がいなかったのが沖野の敗因かな。
父親が元頭取なだけの世襲のお坊ちゃんかと思ったら、
桑山常務の危機対応能力も高いし。
最後が「えっ、これで終わり……」っていう結末なんすが、
普通の作品だったら、やることなすこと失敗し、
仕事と女の両方を失い人生に行き詰った沖野は、
自殺するか、桑山常務や奈美を刺すか、ヤクザに襲われるか、
動的な展開があると思うんすが、静的な人生終わった絶望感でフェードアウト。

『黒い画集』の「第二話」ってのは、
「あるサラリーマンの証言」を「第一話」としてみたいなんで、
「第二話 寒流」より公開が早い「ある遭難」は関係ないみたい。
「寒流」ってのは、
会社の出世コースというか有力な派閥というか本流なのが暖流で
寒流は出世コースから外れた窓際族の先行きってことかな。

伊集院光の週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう!」
小西康陽さんの回で紹介されて観たかった作品なんすが、
……まぁまぁかな。
小西さんが三つの素晴らしいシーン(場面)をあげていたんすが、
①沖野と奈美の結ばれるシーンの大胆な省略
②沖野と奈美と桑山の三人が川の字になって寝るシーン
丹波哲郎の登場シーン
①以外にも、奈美と桑山常務の関係性の進展とか、
沖野が妻子と別居とか、株主総会の結果とか、
小西副頭取(中村伸郎)達と桑山常務のやり取りとか、
ヤクザの親分・山本甚造(丹波哲郎)の登場場面みたいに
状況説明があまりなく突然結果のみが提示されて困惑する。
②は、沖野と奈美が手を繋いでいる一方で、
奈美のもう片方の手は桑山と繋がっている
(桑山の手足が奈美の布団の中に入ってきて悪戯している)
みたいな彼女が上司に寝取られる場面かと思った。