サイグレアニマン

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好きなもの目録 その389 増村保造の黒シリーズ

日本の映画監督で、
私が一番好きなのが黒澤明なんすが、
次に好きなのが増村保造なんで――。


標題:黒の増村保造

分類:映画>邦画>サスペンス

■題名:
黒の試走車(テストカー)
黒の報告書
黒の超特急

監督:増村 保造

原作:
梶山 季之 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
佐賀 潜 (※『黒の報告書』)

撮影:
中川 芳久 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
小林 節雄 (※『黒の超特急』)

音楽:
池野 成 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
山内 正 (※『黒の超特急』)

出演:
田宮 二郎 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
船越 英二 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
高松 英郎 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
叶 順子 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
上田 吉二郎
中条 静夫
大山 健二
高村 栄一
小山内 淳 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
早川 雄三 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
守田 学 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
原田 玄 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
見明 凡太朗 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
伊東 光一 (※『黒の試走車』『黒の報告書』)
目黒 幸子 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)
町田 博子 (※『黒の試走車』『黒の超特急』)

(※下記『黒の試走車』)
菅井 一郎
夏木 章
森矢 雄二

(※下記『黒の報告書』)
宇津井 健
殿山 泰司
神山 繁
小沢 栄太郎
仲村 隆
近藤 美恵子
潮 万太郎
飛田 喜佐夫

(※下記『黒の超特急』)
藤 由紀子
加東 大介
石黒 達也
九段 吾郎
南堂 正樹

発表年:
1962年
1963年
1964年

製作国:日本

評価:
B ★★★○
C ★★☆
B ★★★△

■内容・雑記:

『黒の試走車(テストカー)』
朝比奈豊田宮二郎)は、
タイガー自動車の企画第一課長・小野田(高松英郎)の部下で、
自社で開発しているスポーツ・カー(パイオニア)の機密を守り、
ライバルのヤマト自動車の動向を探る所謂、産業スパイをしている。
ヤマトの重役・馬渡(菅井一郎)は元関東軍特務機関の人間で、
イオニアのデザインを盗用し同じスポーツ・カーを販売しようと企てる。
小野田と朝比奈は社内のスパイを炙り出し、
ヤマトの新車の販売価格情報を手に入れようと、
朝比奈の恋人・宇佐美昌子(叶順子)を使い馬渡にハニートラップを仕掛ける。
タイガー自動車は価格競争に勝ったのだが、
イオニアが列車と衝突事故を起こし、
事故を起こした芳野(小山内淳)はパイオニアが欠陥車だと糾弾し販売不振に。
裏で馬渡に操られている芳野に誰が斡旋してパイオニアを販売したのか探ると……。

朝比奈
「僕達は刑事ですか?」
小野田
「産業スパイさ」
朝比奈
「会社の為なら、売り出す車の為なら、
人を強請ってもいい、騙してもいい、殺してもいい……、
何をしてもいいんですか?」
小野田
「じゃあ、指をくわえて秘密を盗まれ、会社を潰せというのか」
朝比奈
「会社って何です? 秘密って何です? パイオニア・スポーツって何です?
人間よりも偉いんですか? 人を殺してまで守らなければいけないんですか?」
小野田
「子供染みたことを言うな、勝てばいいんだ!
俺は馬渡に勝った。あいつはヤマトを追われ、上手くいけば監獄だ」
朝比奈
「勝った? あんたは負けたんですよ馬渡に」
小野田
「何?」
朝比奈
「あんたは馬渡と同じ人間に成り下がったんだ。
目的の為に手段を選ばない人間に、人殺しの戦争屋に。
この白いワイシャツを脱いで、カーキ色の軍服でも着たらどうですか」
(略)
朝比奈
「産業スパイ……。
買収、脅迫、暴行、窃盗、売春、監禁、
あらゆる犯罪を犯すヤクザになれというんです」
小野田
「道徳を気にしていたら現代に生きられん、落伍するだけだ」
朝比奈
「どうして落伍するんです。僕は自分の為に生きたい、
人間らしく生きたいんだ。あんたや馬渡になりたくない。
今日限りタイガーを辞めさせていただきます」
――てな感じで、朝比奈は会社を辞めるんすが、
自分を取り戻し昌子とよりを戻して人生をやり直すんで、
ある意味では良い終わり方なのかな……知らんけど。

主人公の朝比奈役の田宮二郎と同じくらい、小野田役の高松英郎の出番が多い。
増村保造作品で似た系統は、
ライバル会社との熾烈な販売競争が『巨人と玩具』、
仕事と女のどちらを取るかが『「女の小箱」より 夫が見た』、
スパイの騙し合いが『陸軍中野学校』かな。


『黒の報告書』
千葉地検の検事・城戸明(宇津井健)は、
柿本会社社長殺人事件を担当することになり、
社長の息子・富美夫(仲村隆)や弟・源太郎(上田吉二郎)や
愛人・片岡綾子(叶順子)など関係者の証言から、
社長の後妻・みゆき(近藤美恵子)の愛人の
人見十郎(神山繁)が犯人だと目星をつけ、自白を得ないまま起訴する。
簡単に事件は解決し城戸の東京への栄転が目前と思われたが、
人見の弁護士に老獪な山室(小沢栄太郎)が就くと状況が一変する……。

城戸
「法律は秩序を守るためにある。
凶悪な犯罪を揉み消して、何の疚しさも感じないんですか!」
山室
「裁判はゲームだ、スポーツだよ。強い奴が勝つんだ。
力とテクニックが勝敗を決めるんだよ」

熱血漢の城戸の自白強要と
海千山千の山室の買収偽証の対決って感じかな。
最後に新証言が出てくるんすが時間切れで
城戸が青森に飛ばされて終わるやるせなさ。
社長を愛していて犯人を許さないっていう綾子が買収され
証言を引っくり返すんすが、報酬が約束の十分の一なのに不満を感じ、
自分は偽証したからって態度を翻すんすが、
『黒の超特急』でも同じ様な台詞がある
「(欲に目が眩んだ)女は化け物ですなぁ」って感じ。
増村保造作品で少し似た系統は、『妻は告白する』かな。


『黒の超特急』
田舎の不動産屋・桔梗敬一(田宮二郎)のもとに、
東京から中江雄吉(加東大介)という男が工場用地の仲介をしてくれと訪ねてくる。
用地買収を成功させた桔梗だったが手数料を株に投資し大損をする。
その後、工場用地だと知らされていた土地に新幹線が通る計画で
中江が大儲けしたことを知った桔梗は、分け前に有り付こうと東京へ。
手数料の上乗せを中江に断られた桔梗だったが、
中江と関係する田丸陽子(藤由紀子)を尾行し、
陽子が新幹線公団専務理事・財津政義(船越英二)の二号だと探り当て、
財津の義父で政治家の工藤(石黒達也)の口利きで
中江が銀行から金を引き出していたことを突き止める。
桔梗と陽子が組み、中江から金を強請り取ろうとするが……。

桔梗
「俺は金が欲しい。見ろ! 東京を……。
ビルは次から次へ建ち、高速道路は走り、レジャー産業は全盛だ。
しかし、この世は誰が支配している、誰が楽しんでいる?
大企業、昔なら大名だ。俺たちは何だ? 百姓町人さ。
サラリーマンなんて聞こえがいいが、要するに一生うだつの上がらない虫けらさ。
俺はそんな惨めな生き方は嫌だ。
金を握り、事業をやり、大企業と肩を並べたいんだ!」

『黒の試走車』のタイガーの社長の娘婿・平木公男役と同じ感じで、
義父の立場が上で妻に頭が上がらない気弱な娘婿で
浮気をネタに脅される財津政義役を船越英二が演じてるんすが、
財津の趣味が壺集めなんで、
『黒の報告書』の兇器の青銅の壺やマ・クベの壺なんかを、
愛人の待つ赤坂のマンションに蒐集していて、
『百器徒然袋――雨』の「瓶長」みたいに
赤坂の壺屋敷って呼ばれていると思う。うそ
新幹線が開通してからの問題は『動脈列島』を観ればいいかな。


『黒の試走車』での自動車業界紙の二重スパイ的場や、
『黒の報告書』での殺された柿本社長の弟・源太郎や、
『黒の超特急』での旅館の主人役が上田吉二郎なんですが、
なんか遠藤辰雄(太津朗)と間違うっす。

 

■題名:陸軍中野学校

監督:増村 保造

脚本:星川 清司

撮影:小林 節雄

音楽:山内 正

出演:
市川 雷蔵
加東 大介
仲村 隆
三夏 紳
森矢 雄二
九段 吾郎
南堂 正樹
中条 静夫
高村 栄一
小山内 淳
早川 雄三
守田 学
伊東 光一
夏木 章
飛田 喜佐夫
橋本 力
待田 京介
ピーター・ウィリアムス
E・H・エリック
村瀬 幸子
小川 真由美

発表年:1966年

製作国:日本

評価:B ★★★△

■雑記:
陸軍中野学校っていう大日本帝国陸軍のスパイ養成機関があったのを、
安永航一郎の漫画『陸軍中野予備校』で初めて知ったので、
踏み台昇降の訓練があると思った(うそ)んすがなかったっす。
三好次郎(市川雷蔵)の椎名は学校内では積極的に発言せず、
客観的に淡々と状況を語っていく進行係って感じなんすが、
次郎を探して敵国のスパイになってしまった婚約者の
布引雪子(小川真由美)との物語りでは苦悩する主人公って感じかな。
中野学校卒業の祝いの席に賄いのおばちゃんがいるんすが、
おばちゃんはリヒャルト・ゾルゲが送り込んだソ連のスパイだと判明するのは
後の話であった……うそ。
陸軍中野学校』の草薙(加東大介)中佐から、
攻殻機動隊』の草薙(素子)少佐が名付けられたってことはないのかな?
大映の『陸軍中野学校』シリーズは、
一応全部観たことあるけど詳しい内容憶えてないっす……。
陸軍中野学校』を気に入ったら、
映画やアニメの『ジョーカー・ゲーム』を観てみるのもいいっすよ。
『007』シリーズとか人気のスパイ映画があるから
日本でも現代を舞台にした『陸軍中野学校』みたいな作品を作ればいいのに、
中野ブロードウェイの一角に声優養成所に偽装したスパイ学校――
『公安中野学校』とかを。うそ

『スパイの妻』を観て、
最初に憲兵隊が到着する前に見張っている白と黒のスーツの二人組みとか、
福原優作や竹下文雄を見張ったり尾行している一般人風の男達は
陸軍中野学校の間諜だと思う。