サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その33 とり・みきのポリタン

『豪の部屋』のとり・みき先生出演回を観たんですが、
『セクシー田中さん』のドラマ化問題とかと似たようなトラブルで、
『クルクルくりん』のドラマ化で
とり・みき先生が『週刊少年チャンピオン』の編集部と揉めて秋田書店を出ることになり、
とり・みきは他の出版社に回状が回り干されて漫画家廃業になると思ってたんだな。
しかし、編集者って漫画家同士を交流させないようにして孤立させ
自分達の都合の良いように動かそうと、支配するみたいで恐いっす。
前から、とり・みき江口寿史の漫画は共通点があるなぁ。と思ってたんすが、
やはり、とり・みき江口寿史を意識していたんだなぁ。

下記は、2010年7月に
『裏とり - とり・みき
『NANTOKA NARUDE SHO! - 江口 寿史』
を読み返した時に書いた駄文の再録。
とり・みき江口寿史のギャグ・センスというかネタってけっこう似ていたんだな。と思う。
レトロで決して熱くなりすぎないクールさというか。
1960、70年代のマンガのキャラや特撮、アイドルなんかを、
読者が知っていようが知っていまいが、当然のように登場させ、
読み手の裏をかく、捻ったオチ。なんかが似ているような。
私は1980年代中頃には江口寿史の絵が、
なんかほんとにクールでオシャレで好きだったんですよ。
(『すすめ!!パイレーツ』の頃は、ギャグは面白いんだけど絵が好きじゃなくて)
その一番のっていると思われる頃に、白いワニがきて……。
まぁ、イラスト一枚描くだけで(雑誌の表紙とか広告のポスターかな)
その当時で百万とか二百万貰えたとかの噂も聞くので
漫画描くのバカらしくなったのかも。
江口寿史のギャグの感覚が、
上條淳士の『To-y』のギャグに影響与えたと私は思うんですけど。
んで、『なんとかなるでショ!』読み返してみて
オカマのトーマス兄弟って出てくるんですが、
ギャグで、人間として最低だってことを自己申告していくんですが、
そこで真性包茎と並んででてくるのが、ある病気。
今、再販とかされているのかよく知らないんですが、
今なら絶対修正受ける単語です。
んでんで、私はとり・みきの最高傑作は『ポリタン』だと思うんですが、
『ポリタン』でも、天知(充血刑事)が
輸血用の血液で病気に罹るってギャグがあって、
1980年代はまだ日本国内ではそれほど問題になってなかったんだなぁ。と
とり・みきも、『クルクルくりん』の頃、絵(画風)が洗練されたんですが、
絵がまだ下手な『るんるんカンパニー』の方がギャグの切れが良い。
ギャグ漫画家は絵が上手くなっていくとギャグの切れが悪くなっていくのか?
その点、鴨川つばめは、
ギャグも絵も最高のキレだった時期が短期間だけあったんだけど
あまりにも神がかっていたんで自滅。
『バラの進さま』とか初めて読んだとき、
(当時『週刊少年チャンピオン』買ったとき、載っていたのでついでに読んだのかな。
後から単行本を買ったけど)
子供なんで、ホモが出てくると気持ち悪くて
(すみません、同性愛者のみなさん。子供なんで他意はありません)
嫌いな漫画だったんですよねぇ。
その後、『パタリロ!』を読むようになったあたりから、ホモ漫画にも慣れました。
そうじゃないと少女漫画読めない(かも)。
今はLGBTとか同性愛に寛容な社会になってきてますが、
昔はホモ(オカマ)をギャグにして笑いを取るのが当たり前だったかな。


何度も書いてるんすが、
私は『マカロニほうれん荘』が読みたくて、
週刊少年チャンピオン』を、週刊少年誌ってものを初めて買ったんすが、
マカロニほうれん荘』が終わって、『Dr.スランプ』が始まったら、
週刊少年ジャンプ』を読むようになったので、
1980年代以降『週刊少年チャンピオン』をあまり読んでいなかったんすが、
とり・みき佐藤宏之などは好きだったので、
るんるんカンパニー』『クルクルくりん』は勿論、
『バラの進さま』『たまねぎぱるこ』や、
『気分はグルービー』『プリーズMr.ジョックマン』
などの単行本を買っていました。

とり・みきの代表作は、
るんるんカンパニー』『クルクルくりん』『愛のさかあがり』
とかなのかな。
とり・みきの漫画を全部読んだわけじゃないけど、
でも、私が一番好きなのは『ポリタン』!


標題:とり・みきのポリタン

分類:漫画>ギャグ漫画

■題名:
充血刑事 じゅうけつでか
ポリタン

作者:とり・みき

発表年:
1984
1985年

製作国:日本

評価:A ★未確定

■内容・雑記:
「充血刑事」
『ポリタン』
刑事ドラマ(『太陽にほえろ!』など)をパロディにした不条理ギャグ漫画。
刑事達のキャラがそれぞれ立っているし、
とり・みきの実験的でアヴァンギャルドなギャグが冴え、
漫画や映画などの懐かしキャラ、その時代の流行をいち早く取り上げたネタなど、
続き物でまとまっているのが読みやすい。
(普通のギャグ漫画とは起承転結が違うので、
わからない人には読みやすくないかな)
当時『コミコミ』をたまに買っていたので、連載時のを何話か読んでいたんすが、
単行本でまとめて読むと、その構成っていうかキャラの連続性っていうか
一係の刑事達のキャラのバランスがほんとに絶妙で、
小憎いギャグ、こんなキャラクターやこんなトリックやギミックがわかるかな。
――みたいな、とり・みきからの挑戦状って感じの漫画。
うろ覚えなんすが、雑誌連載時と単行本では
各話の表紙の絵(扉絵)が違っていたと思います。

「充血刑事」は、週刊少年サンデー1984年創刊25周年記念増刊号に載った、
『ポリタン』の前に描かれた短編。『ポリタン』のプロトタイプ。
主人公は一応、天知。
新舞と南は登場しない。

<一係の刑事>
宮入部長:スライム、アメーバ、粘菌。52歳

天知:
天知茂がモデルか。パラソルチョコが好物。娘がいる。47歳
高血圧でいつも充血している。

北さん:
とり・みきの漫画でかかせないキャラ田北鑑生。43歳
色々な人物を取り調べる。
??. 充血刑事:石田(普通の雑魚キャラ?それともモデルがあるのか不明)
01. MINAMI:『冒険ダン吉』とかに出てくるキャラクターみたい?私の知識不足で不明。
02. FUN, FUN, FUN,:デカパンとハタ坊(『おそ松くん』)
03. MAGMA:マグマ大使
04. GHOST BUSTERS:時代劇の侍……、見た覚えがあるのに喉元まででかかって名前がでてこない。『隠密剣士』とかそんなの。
05. DOG DAY AFTERNOON:なし
06. G-S-BOMB:なし
07. CLIFFHANGER:あしたのナオコちゃん
08. TERRORISTS:なし
09. SAMPLING:スティービー・ワンダー
10. MUTEKI GA ORE O YONDE IRU:なし
11. TELEPHONE:「ねじ式」の主人公の少年
12. CODA:デューク東郷(『ゴルゴ13』)

一ツ橋:コンピュータオセロが趣味。

大問題:西部警察の大門(渡哲也)のパロディ。35歳

比浦:火浦功がモデルか。中西裕(チャッピー)に轢き殺される。29歳

新舞:特徴なし。25歳

南:ヒロインなのかな。

とり・みきの漫画のパターン(よくある漫画のパターン)で、
新入生や新人の女性キャラ(ヒロイン:髪型はショート。原田知世の影響か?)
が突然やってくるっていう始まり。
(『クルクルくりん』「思わず気分はところ天」など)

■感想:
私が特に好きな、感心したギャグは、
時限爆弾の話で、
決められたコマ数を消化すると爆発するコマ限爆弾を回避する北さん。
波止場の効果音が実は……。てのと
最終回のそれぞれの刑事の殉職の仕方なんですが、特に
一ツ橋刑事のコンピュータオセロが生きがいってのが伏線になってるのが。
あと「ねじ式」をパロった漫画とかたくさんあると思うんですが、
北さんと「ねじ式」の主人公の少年との絡み(会話)はよく出来ているな
と当時思いました。


■おまけ

『吉田さん危機一発』
ダンヒルのスモーカーズ・デンタルクリームと
サンスターの“こどもはみがき「プチG」メロンソーダ味”を
6:4でシェイク
グラスのふちには赤穂の塩がまぶしてある
――とくれば、それはジェームス・吉田

基本は『007シリーズ』映画のパロディなんですが、
ジェームズ・ボンドにあたるのがジェームス・吉田。
普段は女子高の校長らしいんですが、授業も担当してるらしく
東森くりん(『クルクルくりん』)に変装したタキタ13に命を狙われたりしているっす。
とり・みき得意の懐かしグッズやレトロなモノがたくさん登場します。

吉田さんが敵に囲まれ危機一発になったとき、
安田成美のアルバムをかけて、
その怪音波により危機を脱出するってネタがあるんですが、
(『じゃりン子チエ』のヒラメちゃん並の破壊力)
そんなに凄いのか?
アウトサイダー・ミュージック好きにとっては、逆に聴きたいんですが。

顔が『ターミネーター』のときのシュワちゃんで、
かつて一世を風靡した漫画家として
葱山するめって登場するんですが、
経歴的に鴨川つばめをモデルにしているっぽい。

あと、太宰治の『人間失格』を地球上にばらまいて
人々を絶望させ自殺させる作戦。とかあるんですが
活字離れで失敗とか……
代わりに漫画――、
山上たつひこの『光る風』あたりにすればよかった。とか書かれているんすが、
今は萌え系の可愛い絵と、なんてことない日常生活の話じゃないと、
誰も読まないんじゃないかなぁ。(『光る風』はその真逆)


『a Heebie-Jeebie ひいびい・じいびい』
その当時のとり・みきの集大成的な漫画で
五十音順にテーマごとのギャグやパロディがある漫画なんですが、
それぞれ別世界で関わりの無いように思えたキャラクターや世界が
最終的にリンクしていくのがカタルシス
私は特に、「さいこと」「ぬい・ぐるみ」の話が好きかな。
「ぬい・ぐるみ」の疎外感というか孤独感、
自分が他人と違い、避けられているんじゃないか?って不安は私にもあり、
首筋のファスナーを確かめては、よかった私は普通の人間だと
精神を安定させてます。

「ほし・の・おう・じ・さま」
帽子の絵(落書き)みたいなコマから、それが変化して
未知との遭遇』のデビルスタワーになったり、
前かがみにまるくなったオバQの後姿になったり、コタツになったりするんですが、
初めて読んだ時、どこが『星の王子さま』やねん。
とまったく意味がわからなかったんですが、その絵が
「象を丸呑みしたウワバミ」だったんすね。
星の王子さま』を読んでないと、まったくわからない。

漫画家とか追い詰められると、白いワニを見るみたいっすが、
とり・みきの場合は、らくだみたいっす。
『ひいびい・じいびい』を読んでからだいぶ後に、
ルイ・アームストロングに「HEEBIE-JEEBIES」って曲があるのを知り
そこからタイトルとったのかな。と思ったり思わなかったり。
意味的には、緊張・心配などからいらいら(びくびく)する気持ち。らしいっすが。


『しゃりばり』
現実、実体験だと思っていた世界が、
実はゲームのバーチャルリアリティだったっていうネタが、
どのくらい前からあるのかよく知らないんですが。
8話までは普通の中世(西洋)の英雄伝説のパロディなんですが、
単行本時に描き下ろした9、10話で、
実はその世界は夢、セラピー(ゲーム)であり、
現実は近未来社会のいちサラリーマンにすぎないってオチになっている。
十字路に立つと自分の未来が見える。
ロバート・ジョンソンは、十字路で悪魔に遭い
ギターが上手くなったという伝説があります。クロスロード)
そこでハンス(田北さん)は、自分の未来がつまらないモノと悟り
ゲーム内に留まろうとするんですが、
そんな現実逃避して元の世界に戻ってこない人へのセーフガードなのか、
ゲーム世界も狂ってくる。
一応美人(ヒロイン)の姫様クリームが、
化粧品の水銀や鉛で丹毒症になり実はブスだとわかる。
最後は、『ビューティフル・ドリーマー』的な終わり。


■その他:
とり・みきの漫画に出てくる最重要キャラクターといっていい
田北鑑生っているじゃないですか。
実物の書店の店員をモデルにしているらしいんですが、
以前からとり・みきとはどういった関係なんだろうと思ってたんですが、
知り合いや友達の漫画家や小説家を漫画のキャラクターにするのが
とり・みきの得意ですが、一般人と思しき人をキャラクター化するのはなぜか?
たんなる友人、大学やサークル時代の知り合いか?
とか思ってたんですが、
『しまった。とり・みき傑作集』のあとがきを小松左京が書いているんですが、
それを読むと、どーも田北くんってのは、こまけん(小松左京研究会)の人らしく、
その繋がりでとり・みきと知り合いなのかもと。
足がくさいという強烈なネタと、あと中日ファンってことくらいしかわからず、
キャラのイメージからSF好きとは、まったく想像できませんでした。