サイグレアニマン

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気になるもの目録 田宮二郎の夜の配当

田中重雄監督の『夜の配当』が、
原作が梶山季之で主演が田宮二郎なんで、
大映の「黒シリーズ」に入ってもおかしくない
『黒の配当』って感じで面白いです。
モダンでスタイリッシュさは増村保造には及ばないけど。


標題:田中重雄と田宮二郎の夜の配当

分類:映画>邦画>サスペンス

■題名:夜の配当

監督:田中 重雄

原作:梶山 季之

音楽:木下 忠司

出演:
田宮 二郎
藤 由紀子
浜田 ゆう子
高松 英郎
山茶花
角 梨枝子
早川 雄三
見明 凡太朗
大山 健二
花布 辰男
倉田 マユミ
高村 栄一
伊東 光一
町田 博子
仲村 隆
九段 吾郎
夏木 章
小山内 淳

発表年:1963年

製作国:日本

評価:C ★★★

■内容・雑記:
最初の大映株式会社のロゴマークが出る所で
ピアノのフレーズから始まるんすが、
金曜ロードショー』の初代オープニング
「フライデー・ナイト・ファンタジー」っぽいな?
と思う間もなくすぐ全然違う曲調になる。
私は木下忠司の映画音楽はあまり好みじゃないんすが、
この作品の音楽は良いかな。
オープニングタイトルで怪しい女の影が会議を窺う場面から始まる。

伊夫伎亮吉(田宮二郎)は、世界レーヨンの文書課員だったが
石神常務(山茶花究)が愛人の徳光せつ(角梨枝子)に任せている料亭の宴会で
怪しげな踊りを披露させられた屈辱もあり、
「俺達は、どんなに逆立ちをしてみたところで
資本家にはなれっこないんだ。
かと言ってサラリーマンのまま
ずるずるスクラップになるのは御免だ。
だったらどうする? 悪党になる以外ないんだ。
俺達は今の世の中をどんなにしてでも生き抜いて、
例え水爆が落っこたって俺達は生き抜くんだ」
っていう覚悟で会社を辞め
伊夫伎トラブル・コンサルタントを設立し、
権力の座に胡坐をかいて人間を人間とも思わない
石神常務を追い落とそうと世界レーヨンを揺さぶる。

石神常務
「我々には四つの鉄則がある。いいかね?
消費者にはどんどん使わせて、どんどん捨てさせること。
無駄遣いさせること。流行遅れにさすこと。
そのためには次々に新しい流行を作り出すこと。
消費者が王様なんてのは唯の体裁なんだ。
需要は待つもんじゃなくて創るもんなんだ。――」

世界レーヨンはポリメタキシンアミノ系繊維
「ポリレン」を売り出そうとしていたが、
伊夫伎は元同僚の小泉かおる(藤由紀子)にスパイさせ
ポリレンの商標権を先に取得する。
誠実なかおるが伊夫伎に協力したのは、
弟が病気(カリエス)でお金が必要なこともあったが
文書課時代の寡黙な伊夫伎に好意を寄せていたからだった。
ポリレンの占用使用権を世界レーヨンに売り渡し大金を手にした伊夫伎に、
かおるは伊夫伎の人間性が失われていくのを感じ別れ会社も辞めてしまう。
次に伊夫伎はデザイン課の一井鮎子(浜田ゆう子)と接触し、
自分のデザインが上司に奪われるのに不満が溜まっていた鮎子を釣り上げる。
鮎子からの情報を世界レーヨンのライバル会社・極東化繊に流し
またまた石神常務の鼻を明かす。
せつの料亭の女中お照(町田博子)の密告から
世界レーヨンが富士山麓に工場を建設しようとしているのを掴んだ伊夫伎は
先回りして土地の一部を所有してしまう。
怒った石神常務は伊夫伎の身辺を洗い、かおるや鮎子との関係を突き止める。
石神常務は伊夫伎やかおるが逮捕されると脅し、
伊夫伎の身を心配するかおるを騙し伊夫伎を獄中に追いやるのだったが……。

伊夫伎が石神常務の愛人せつとお風呂に入り、
そのイチャイチャ音を石神常務と桧垣文書課長(早川雄三)が聞いている
っていう気まずい場面が長い。
デザイナーの藤原先生(倉田マユミ)が
一井鮎子のデザインを自分のものにしてんすが、
カリブ・愛のシンフォニー - 鈴木 則文』でも上司が部下のデザイン盗ってたんで
デザイン業界では当たり前のことなのか?
最後は、ポリレンの染色法が
イタリアのジェノア社のパテントを侵害していて、
ジェノア社から日本代理を任された伊夫伎が勝ち
石神常務は会社を追われるんすが、
目の敵にしていた石神常務が居なくなって張り合いがなくなったせいか、
留置場で頭を冷やしたのか、伊夫伎は暖かい愛に目覚めかおるに求婚するんすが、
一足遅くかおるは弟のいる信州の療養所に行くことを決めていて、
かおるを追った伊夫伎は交通事故で死ぬ……うそ。
なんか二人は結ばれるっす、甘いっす。

『夜の配当』は今だと『半沢直樹』系の映画になるのかな。
リメイクするなら石神常務は香川照之だろうなぁ。
山茶花究は『巨人と玩具 - 増村 保造』の専務や
小早川家の秋 - 小津 安二郎』の番頭など嫌な重役が似合う。
関係無い人間が勝手に商標権取得して問題を起こすって今でもよくあるし、
日本はスパイ天国なんで機密や権利を盗まれ放題ってイメージ。

ちょっとだけ話が横道に逸れるけど、
私は若い頃にはあまりNHKを観ていなかったので、
若気の至りで『NHK受信料拒否の論理 - 本多 勝一』とか読んで
NHKに否定的だったんすが、
ここ20年くらい民放よりNHKの方を視聴してるし、
囲碁や将棋の番組を放送してるので今は肯定的っす、私はすぐ変節するっす。
んで、『夜の配当』は
NHKの「BSシネマ」あたりで放送されてもいいと思うんすが
絶対無理だろうなぁ……
伊夫伎がNHK受信料拒否を指南するような場面があるんすよ。
『夜の配当』や「NHKに捧げる歌 - 早川 義夫」なんかが
逆にNHKで放送されたら裏がありそうで怖いけど。