サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その375 野村芳太郎の八つ墓村

野村芳太郎監督の『八つ墓村』を「松竹シネマPLUSシアター」で
またまた観直したんすが、
それほど書くこと思いつかなかったんで、
「好きなもの目録 その373 市川崑犬神家の一族」か
「好きなもの目録 その374 野村芳太郎影の車と鬼畜」に
おまけとして追記しとこうかなと思ったんすが、
「好きなもの目録」の数を増やすために、
削除した昔のブログの記事の再録で濃茶の尼を濁す……じゃなくて
お茶を濁すことにしたっす。

私が小学生の頃、映画『八つ墓村』が公開されて、
「祟りじゃ~っ! 八つ墓の祟りじゃ~っ!!」
っていう薄気味の悪い婆さん(濃茶の尼)の台詞が子供達の間で大流行したっす。
そんで、駄菓子屋なんかで
「たたりじゃ~カード?(正確な名称は知らない)」みたいなのが売っていて、
ヘタクソな絵で、頭に蝋燭つけた白装束の幽霊みたいなイラストが描いてある
クレジットカード大くらいの紙のカードなんですが、
裏面がシールっぽくなっていて、
剥がすとなんかワセリンみたいなのが塗ってあるんすよ。
んでそのワセリンを指先に塗って擦り合わせると
ア~ラ不思議? なんと指から煙がっ!
っていう子供だましなモン売ってたのが思い出っす。


標題:祟りじゃ~っ! 野村芳太郎八つ墓村

分類:映画>邦画>ホラー (オカルト)

■題名:八つ墓村

監督:野村 芳太郎

原作:横溝 正史

脚本:橋本 忍

音楽:芥川 也寸志

撮影:川又 昂

出演:
萩原 健一
小川 真由美 (小川 眞由美)
山崎 努
山本 陽子
市原 悦子
山口 仁奈子
藤岡 琢也
浜村 純
浜田 寅彦
中野 良子
加藤 嘉
井川 比佐志
山谷 初男
任田 順好
夏 純子
大滝 秀治
花沢 徳衛
綿引 勝彦
下條 アトム
夏八木 勲
田中 邦衛
稲葉 義男
橋本 功
丹古母 鬼馬二
風間 杜夫
島田 陽子
椎谷 建治
岡本 茉利
下條 正巳
吉岡 秀隆
渥美 清

発表年:1977年

製作国:日本

評価:A ★★★★◎

■内容・雑記:
八つ墓村 (1977年)』を観たんですが――
監督が野村芳太郎、音楽が芥川也寸志
渥美清加藤嘉が出演してるってので観てて……
ホラーかと思ったらコメディだったのが意外。

舞台は岡山県の津山、
行方不明の孫を探しに朝鮮半島に渡った中隊長(加藤嘉)は、
そこで何者かに脳を銃で撃たれ客死。
中隊長に恩ある山田正助(渥美清)が中隊長の故郷を訪ねると
ある家系に連続する不審な死に直面する。
その家では20数年前、
膨大な書類整理と上官の陰険な叱責によりノイローゼになった男が
上官を切り殺すという惨劇があったのだ。
龍の顎(病院棟の裏)の場所とはどこなのか?
華厳の滝に浮かぶ双子の老婆の一人――
はたして本当に祟りなのか。

……まぁ、よっぽど鈍い人意外は気付いているとは思いますが
『拝啓天皇陛下様』と『八つ墓村』が混ざったっす。

『拝啓天皇陛下様』では、やっぱ渥美清は演技上手いなぁ。
人情モノの喜劇に限るのかもしれないけど。
八つ墓村』の金田一耕助役の方では、ほぼ空気なのに比べて、
山正の生き生きとした野生児というか自然児の演技は見事。
私の中での金田一耕助のイメージは、
石坂浩二が強くて、次にドラマ版の古谷一行かな。
渥美清金田一はなんか、探偵っていうより興信所の人って感じで
推理するより土地土地を訪ねて過去帳(家系)を調べたり、
会社の財務内容調べたりしてるだけのような。

八つ墓村 (1977年)』なんすが、子供の頃から
私の中で『八つ墓村』は恐い、恐いってのが熟成されていて
鍾乳洞の真っ暗闇の中、何が飛び出るか……
とか観る側のイメージを増幅させるものがあるなぁ。と
でも大人になってから観ると思ったより恐くなかったっす。
尼子義孝(夏八木勲)らの落ち武者への騙まし討ちの場面とかアクション凄いし、
多治見要蔵(山崎努)の村人虐殺シーンがなんか
逆にかっこよく思えてしまうのが不謹慎とは思いますが。
市川崑監督の『八つ墓村 (1996年)』の岸部一徳
テレビドラマ『横溝正史シリーズII・八つ墓村』の中村敦夫などと比べるのも一興)
しかし、八つ墓明神の祟りを装って、莫大な遺産目当ての連続殺人……
と思わせてやっぱ八つ墓明神の祟りだったってなオチはいいのか?
まぁ、面白いからいいけど。
尼子義孝の子孫と多治見家の子孫が何百年もかけてめぐり合い結婚したり、
森美也子(小川真由美)が切り盛りする会社を破産寸前までしたりしたのか八つ墓明神。

渥美清が出てると、みんなフーテンの寅さんにみえるなぁ。
『拝啓天皇陛下様』の方が『男はつらいよ』より昔の作品なのに
なんか寅さんがイメージされて、いっそタイトルを
男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』
とかにするとか……って、もうあるよ!
八つ墓村』の方も、同じ横溝正史の『犬神家の一族』から犬神繋がりで
犬神の悪霊』みたいな感じを入れて
男はつらいよ 八つ墓の悪霊(たたり)』
みたいなタイトルだったら……よくないか。
吉岡秀隆が寺田辰弥の少年時代を演じた影響からか、
男はつらいよ 寅次郎紅の花』で、諏訪満男が及川泉の結婚を妨害するため
津山に乗り込んで結婚相手の一族を大虐殺するっす。うそ


野村芳太郎監督で橋本忍脚本なんで、重厚に事実(証拠)を重ねていき、
複雑な人間関係が明かされていくミステリーかと思ったら、
本当に尼子の祟りだったというオカルト落ち。
落ち武者への騙まし討ちや、多治見要蔵の村人虐殺、
鍾乳洞の半狂乱で追いかけてくる森美也子など
ホラー的な名場面があるんで祟りでも納得出来るかな……。
市川崑監督の『八つ墓村 (1996年)』の方が原作に近いようで
八つ墓村 (1977年)』で削られていた里村兄妹の登場場面が多く、
1977年版の森美也子は、尼子の血筋で負債の穴埋めに多治見家の財産を狙っていたんすが、
1996年版の森美也子は、里村慎太郎に田治見家の財産を相続させるための献身。
1996年版は森美也子を入れて八人死んでるんすが、
1977年版では森美也子も入れると九人死んでるんで『九つ墓村』になる。うそ


んで、「松竹シネマPLUSシアター」の高画質でまた観たんすが、
前は鍾乳洞の中の暗闇の場面が何をやっているのかよくわからなかったんすが、
高画質だとけっこうわかって良かったっす。
基本、野村芳太郎監督の松本清張原作の映画と同じ演出で、
渥美清が出ている場面は『男はつらいよ』で、
落ち武者の欺し討ちや、
多治見要蔵や美也子が狂乱して追いかけてくる場面なんかはホラーやスラッシャーかな。
濃茶の尼が美也子を強請って殺されるんじゃなくて、祟りを強調するために殺される。
昔の映画はフィルムだからかなんか重厚で良いし、
小川真由美山本陽子中野良子と女優が美しいし、
双子の老婆の姉・小竹の市原悦子は、『AKIRA』の実写版があったらキヨコ役を出来そう。
尼子義孝役の夏八木勲の武者姿を見てると『戦国自衛隊』の長尾景虎を思い出す。

津山事件(多治見要蔵のモデル)に興味を持った方は
丑三つの村 - 田中 登』
「負の暗示 - 山岸 凉子」
をお薦めします。