サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その370 山下敦弘のリアリズムの宿

山下敦弘監督の『1秒先の彼』と『カラオケ行こ!』をチョロっと観る。

『1秒先の彼』は、台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイクらしいんすが、
なんか……時間停止AVみたいなんすが……。
一般人の時間経過がよくわからないんすが、
何でも1秒遅い長宗我部麗華(清原果耶)や釈迦牟尼仏憲(荒川良々)や
勘解由小路平兵衛(加藤雅也)は一日時間が増えて、
何でも1秒早い皇一(岡田将生)は一日時間が減って、
他の人(一般人)は増えも減りもしないってことなのかな。
でも時間停止中に交通事情を考えるとバスで天橋立や宇治まで行くのは無理だと思う。
麗華が美人だからまだマシだけど、
やってることはストーカーや変態と変わりないような。
清原果耶は丸顔だと思ってたんすが細面になっていて
エンディングのクレジットを観るまで気付かなかったっす。
私は鈍感なんで……。

『カラオケ行こ!』は、
合唱部副顧問代理のももちゃん先生(芳根京子)をみて、
『表参道高校合唱部!』からの時が経つ早さを感じ、
山下敦弘監督と野木亜紀子脚本の『コタキ兄弟と四苦八苦』からの繋がりで
芳根京子が出演してるのかなと思う。
『チャンネルはそのまま!』の芳根京子のコメディ演技が好きなんで、
ももちゃん先生も天然バカっぽくていいな。
あと、成田狂児(綾野剛)と祭林組の連中は
中学校合唱部部長の岡聡実(齋藤潤)にアドバイスをしてもらうより、
ボイストレーナーのみぽりん先生に習った方が上達すると
『みぽりん - 松本 大樹』を観て思う。うそ

んでオマケで、十年前の2014年6月の
マイ・バック・ページ』を観た時のメモ。
山下敦弘監督は、ダメ人間を撮るのが本当に上手い。
人物二人の対話場面とかも、その場の雰囲気が伝わってくる。
でも、学生運動とかの時代を映すのは重荷だったのでは。
松山ケンイチ演じるエセ左翼活動家の胡散臭さ気持ち悪さ、
思想ではなくファッション(流行)でやっている感が良い。
今からすると、学生運動の熱狂って何だったんだろう?
とバカみたいなんですが、当時はそれが世界的な潮流だったんだろうなぁ。
1960、70年代の思想や文化は
左翼(マルクス)的なモノが若者には共感されたんだろうけど、
それも結局一部の進歩的な文化人や学生だけで、
一般の人には関係ないことだったんだろうなぁ。
ヘンリー・カウとかアレアとか左翼活動とリンクしていたみたいだけど、
音楽(プログレ)を聴く分には、私には関係ないし。
日本の左翼組織が胡散臭さいのが、周辺の共産国家が裏で糸を引いてそうだから。
革命闘争じゃなくて、自分達の名前を売りたい功名心だけで
一人の人間(自衛官)を殺害するエセ活動家達。
それを間接的に援助している記者(妻夫木聡)の責任も重いと思うけど、
妻夫木聡本人は松山ケンイチに騙されたと自分も被害者面。
会社をクビになったけど文筆業でなんとか生活しているし、
革命ごっこで殺された人間の方に同情する。
妻夫木聡演じる記者は映画好きらしく、後に映画ライターなど作家になるみたいで、
川島雄三の『洲崎パラダイス赤信号』の一場面とか、
真夜中のカーボーイ』や『ファイブ・イージー・ピーセス』の話題や、
『十九歳の地図』を試写会で観る場面などが出てきます。


映画オタクは、邦画を(洋画やアニメに比べて)見下している
――みたいなことをよく見かけるんすが、
映画をよく観る人で、邦画は観ない(選択肢にない)ってのはあるだろうけど、
私の考える映画オタクといわれる人は、
邦画の古い映画やマニアックな映画も観ている人だと思うけど。
私は洋画も邦画も両方好きなんですが、
日本人なんで邦画の方が観やすい(感情移入しやすい)かな。
2000年代(2000年から2009年)で大好きな邦画(実写)の
リアリズムの宿 - 山下 敦弘』を目録に。

山下敦弘監督作品で山本浩司が出演している
『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』を観直したんすが、
(※三年前の2021年6月のことです)
リアリズムの宿』は何回観ても面白くて大好きなのを再確認したんすが、
『どんてん生活』『ばかのハコ船』は
初めて観た時はけっこう斬新で面白く感じたんすが、
ダメ人間(底辺の人)の日常をオフビートなコメディで見せるってのが
目新しくなくなったせいか、それほど面白く感じなかったっす。


標題:山下敦弘のダメ男三部作 リアリズムのばか生活

分類:映画>邦画>コメディ

■題名:
どんてん生活
ばかのハコ船
リアリズムの宿

監督・脚本:山下 敦弘

脚本:向井 康介

音楽:
赤犬 (※『どんてん生活』『ばかのハコ船』)
くるり (※『リアリズムの宿』)

撮影:近藤 龍人

出演:
山本 浩司
今枝 真紀 (※『どんてん生活』『ばかのハコ船』)
山本 剛史 (※『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』)

(※下記『どんてん生活』)
宇田 鉄平
前田 博通
康 季丹

(※下記『ばかのハコ船』)
小寺 智子
木野 花
笹野 高史
細江 祐子
田中 暁子
松江 哲明

(※下記『リアリズムの宿』)
長塚 圭史
尾野 真千子
サニー・フランシス
康 すおん

発表年:
1999年
2002年
2003年

製作国:日本

評価:
B ★★★○~C ★★★くらい
B ★★★△~C ★★☆くらい
S ★★★★★◎くらい

■内容・雑記:

『どんてん生活』
プータローの町田努(宇田鉄平)が、パチンコ店の開店に並んでいると、
長い前髪リーゼントの南紀世彦(山本浩司)に声をかけられる。
仕事を世話してくれるという紀世彦のアパートに転がり込んだ努は、
裏ビデオ制作者の田所(前田博通)や出演者の愛子(康季丹)を紹介され、
裏ビデオのダビングを手伝いながらダラダラ生活を送る。
努はボーっとしてるので、きーさん(紀世彦)が何者なのか詮索しないんすが、
偶然、呪のマスクや特攻服や写真を見つけ、
きーさんが元暴走族(全日本地獄連合の頭)で
佐知子(今枝真紀)と結婚して子供もいたが別れたことを知る。
台詞で説明するんじゃなくて、写真を一枚一枚見ていったり、
裏ビデオ女優の愛子が身バレしたか? 警察に捕まったか?
――して裏ビデオの仕事を辞めたのが
なんとなく状況でわかる演出で上手い。
努がコンビニで缶ビールを万引きして捕まった場面で
なぜか血みどろのバイオレンス妄想が入る。
山本浩司は、古谷実の漫画のキャラや竹中直人っぽい。


ばかのハコ船
マルチ商法っぽい健康飲料あかじるの販売に手を出し500万円の借金をした
酒井大輔(山本浩司)と恋人の島田久子(小寺智子)は、
再起を図るため東京から大輔の実家がある田舎に拠点を移す。
人脈や地縁を頼るが、父(笹野高史)や母(木野花)や
いとこの大村亜紀子(今枝真紀)は大輔の商売に大反対で、
幼馴染のスーパーの息子・尾崎充(山本剛史)は非協力的で八方塞。
父といとこが謀り自分達が勤める食品会社で大輔を働かせようとしたのに怒って、
中学生の頃付き合っていた今は風俗嬢のヴェロニカこと
小林マドカ(細江祐子)のところに大輔は家出する。
妊娠して高校中退したマドカの妹(田中暁子)との浮気現場を
久子とマドカと尾崎に見つかり意気消沈する大輔。
心機一転、ドラッグストアであかじるの店頭販売を行うがまったく売れず、
久子は完全に心が折れ、大輔は事業に見切りをつけ二人は東京に戻ることに。
二人の近況が不明の中、
大輔の大学生の弟・純(松江哲明)が郵便局にお金を引き出しに行った帰り、
パンストを被った不審な男女に遭遇する。

浮気を見つかった大輔は空気の抜けたビニール人形みたいになるんすが、
『フライングハイ』のオートパイロットみたい。
『どんてん生活』の男二人は
何も考えず流されるままダラダラ生きてる消極的なダメ人間なんすが、
ばかのハコ船』の男女二人は向上心があるけど、
無能な働き者って感じで積極的なダメ人間かな。
久子は真面目だけど大輔となぜか別れることが出来ずズルズル続いてしまい、
最後は一緒に強盗までしようとするのがなんか悲惨。


リアリズムの宿
自主映画?の制作(監督や脚本)をしている
木下俊弘(山本浩司)と坪井小介(長塚圭史)と船木テツヲ(山本剛史)の三人は、
映画(脚本)のアイデアやロケハンのため旅行することになり
東京から鳥取県に行き国英駅に現地集合だったが、
いつまで経っても船木は現れない。
顔見知り程度の木下と坪井は仕方なく二人で旅館に向かうが、
木下が案内した旅館は潰れていて、
困った二人は地元のタクシーの運ちゃんに旅館を紹介してもらうが、
そこは外国人の変な主人がいる旅館だった……。
その旅館を後にし、荒れた日本海を前に他愛のない会話をしていると
突然、二人の所に裸の女性が駆け寄ってきて驚く。
服や荷物を海に流されたという東京の原宿に住む21歳の
川島敦子(尾野真千子)と名乗る女性と一緒に行動することに……。

原作は、つげ義春の「会津の釣り宿」「リアリズムの宿」みたいだけど、
原作の忠実な映画化ではなく、原案に使っている程度かな。
茶店で出会う謎の中年男・ポンちゃん(康すおん)に
車の定員オーバーで置き去りにされるヤンキー女・レイコの場面が、
3-4X10月』の置き去りにされる黒人女性を連想。
ヤンキー男・ミツルの家で木下がPS2の『ICO』をやっている。
前に観た時は、山本浩司尾野真千子の印象が強くて、
坪井役って誰? って感じだったんすが、
平成の邦画やドラマを昔よりは沢山観ているので、
観直したら、坪井って長塚圭史じゃん……と驚きました。
前に観た時は、森田屋の息子が味噌汁の鍋を持って来る時、
落としたのは蓋だと思ってたんすがおたまだったっす。
一番最後に船木が現れて終わりだと思ってたんすが、船木が現れた後に、
本当は地元の女子高生だった敦子を見かける場面とかまだ続いてたっす。
赤の他人だった木下と坪井が旅を通して
(変な旅館に一緒に泊まることにより)段々仲良くなっていき、
最後は一緒に映画の脚本を書こうってなるのが良い。

リアリズムの宿』の木下と坪井と船木の17年後を描いた続編
2021年公開の短編映画『ランブラーズ2』もあるみたい。