サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その419 杉井ギサブローの銀河鉄道の夜

東北地方太平洋沖地震東日本大震災)のあった2011年に、
宮沢賢治をモチーフにした
輪るピングドラム - 幾原 邦彦』が放映されたのに触発され、
宮沢賢治原作のアニメ化作品
セロ弾きのゴーシュ - 高畑 勲』
銀河鉄道の夜 - 杉井 ギサブロー』
イーハトーブ幻想~KENjIの春 - 河森 正治
について駄文を書いたのをリサイクル。
中村隆太郎監督の
グスコーブドリの伝記
『賢治のトランク 双子の星』
は未視聴だったり一部しか視聴してないのでパス。


宮沢賢治ウィキペディアみて、
生まれた年と亡くなった年に、三陸地震があったのを知り、
東北地方太平洋沖地震のあった2011年に、
宮沢賢治をモチーフにした、
輪るピングドラム』が放映されたのもなにかの縁か。

宮沢賢治の作品を教科書とかは別にして本格的に読んだ時、
どの作品、どの出典か(忘れて)わからないんですが、
他人の幸福なしには、自分の幸福なし。
みたいな言葉に衝撃受けたんですよねぇ。
いくら自分(だけ)が幸福でも、他人が不幸なら、
その不幸が巡り巡って自分に襲ってくる。
他人が幸福なら、自分が不幸でも、巡り巡って自分も幸福になれる。みたいな思想。
よくニュースなんかで、幸せな家族が通り魔に襲われる悲劇が──
平和な先進国なのにテロが──
みたいなので、なんの落ち度もない家族がなぜこんな不幸な目に……
それにつけても、貧乏でバカで友人の一人もいないクズ(通り魔)が許せない!
みたいな世の中の憤り──それはそのとおりなんですが。
そういう不幸な人達(通り魔やテロリストなど)を救い、幸福にしなければ、
結局自分達の幸福も一瞬のことなんだよ。と
賢治が言っているみたいで。(私の勝手な解釈です)


標題:宮沢賢治アニメ 杉井ギサブロー銀河鉄道の夜

分類:アニメ>映画

■題名:銀河鉄道の夜

監督:杉井 ギサブロー

アニメーション監督:前田 庸生

原案:ますむら ひろし

脚本:別役 実

キャラクターデザイン・作画監督:江口 摩吏介

音楽:細野 晴臣

声優:(保留)

発表年:1985年

製作国:日本

評価:A ★★★★★

■雑記:
アニメ『銀河鉄道の夜』を、
初めて観たのがいつだったか思い出せないけど、
私の子供の頃って、銀河鉄道っていえば
松本零士の『銀河鉄道999』のことだったんですよ。
あとちょっとした宮沢賢治ブームだったのか、
本屋にますむらひろしの漫画が置いてあって、少しだけ立ち読みした思い出が。
そのころの私は、あまりファンタジーっていうかネコの擬人化に興味が持てず、
それ以上読もうとも思わなかったです。
んで、テレビで放送した『銀河鉄道の夜』を、
最初からか、途中から観たのか、部分部分を観たのか憶えていないんですが、
銀河鉄道999』の明るく(明るいか?)アクションがあるのと正反対の
銀河鉄道の夜』に戸惑ったような……でもなんか絵が凄いって印象付けられたような。
んでんで、2000年前後くらいかな、二度目を最初からキチンと観て、
これは凄い作品だ! となったわけっす。
アニメのジャンル的には、ニューエイジ・アニメ、
アンビエント、ヒーリング・アニメって感じかな。(そんなジャンルがあれば)
作品全体が妙な雰囲気に包まれているんですよ、
死の世界というか夢の世界というか。
ストーリーは知ってるものとして語っていきますが、
美術と細野晴臣の音楽が本当に良いんですよ。
登場人物をネコに置き換えたのも世界観にマッチしているし。
ただ不満は、ネコならネコで全登場人物を統一して欲しかったっす。
タイタニック号の乗客だけが普通の人間で描かれていて……、
そのキャラデザがまた、あだち充風なんですよ。
杉井ギサブロー監督が『タッチ』をやっていたせいなのか。
目と目の間がヒラメのように離れているのが不気味で、
へたすりゃ日野日出志のキャラデザかと勘違いするっす。
この(ネコの)世界観に浮いてるんですよ、その人間キャラが。
(※歴史的な惨事に配慮して人間にしているみたいです)

私の性格上、話がアッチコッチに飛ぶんですがスミマセン。
輪るピングドラム』の二話で、地下鉄でチカンと間違われる場面に出てくる
苹果の友人のガングロの女の子、靴を片方失くすんですが、
シンデレラみたいに、後で冠葉が忘れ物だよと彼女に接近するんじゃ。
とか思ったんですが、
銀河鉄道の夜』で、タイタニック号の乗客の男の子が
靴を片方履いていない描写があって、ひょっとしてコレが元ネタなんでは。
と思ったっす。

また『銀河鉄道の夜』に戻って──
このアニメ、やたら登場人物(ジョバンニ)のまばたきが多いんですよ。
ネコがジッと見つめるみたいな、
ジョバンニが正面から対象を黙って見つめるカットが多い。
私がこのアニメを観て、最初に驚いたのは
人物(ネコ)の手の動きだったような、
なんかリアルに机の上とか星図の上とかを移動する
手の動きだけで凄いと思ったっす。
ザネリは、「らっこの上着が来るよ」とからかい
ジョバンニを村八分にする先頭に立ってるんですが、
アニメ『赤毛のアン』のジョーシー・パイに性格がソックリ。
声優も同じ堀絢子。ニンニン
カムパネルラだけは、ジョバンニに同情的で親友なわりに、
銀河鉄道に乗った後でしか会話を交わさないところに、
村八分の人間と仲良くして、自分も村八分にされたら
どーしよーという日本社会の陰惨な部分が垣間見られる。うそ
ジョバンニと病気の母との会話が、ドア越しで姿が見えないのが
なんか本当は母などいないのではないか?と不安にさせる。

美術・音楽・世界観・アニメーションどれも最高レベルなんですが、
原作通りとはいえ、銀河鉄道の星巡りが、ゆったりと静かに進むので
ちょっと退屈というか眠くなるかも。
鳥捕りが試食でくれる鳥、鳩サブレーかよっ。
ジョバンニの持っていた切符が特別で、
銀河鉄道999』の無期限パスみたい。

銀河鉄道の夜』のサントラは細野晴臣が手掛けていて、私はとても好きで、
アニメはそんなに観返さないけど、サントラはたまに聴いてます。
確か『風の谷のナウシカ』のサントラも細野さんの予定だったのが
宮崎監督が気に入らなくて、
ナウシカ』のイメージアルバムを作った久石譲が本編(アニメのサントラ)
もやるようになった、みたいな。
そのせいか、『銀河鉄道の夜』には宮崎監督を見返してやるみたいな感じというか
出来が良いんすよねぇ。
だからもし、『ナウシカ』も細野さんがやっていたらどーなったんだろう。
と想像すると……。歴史にIFは無いっすが。
久石譲が今ほど活躍する未来にはなっていなかったかも。
とか考えると面白いっす。

銀河鉄道の夜』の杉井監督やスタッフも共通する
グスコーブドリの伝記』を絶対名作に違いないと思って観て、
残念な気持ちになったかな……。

 

■題名:セロ弾きのゴーシュ

監督・脚本:高畑 勲

キャラクターデザイン・原画:才田 俊次

美術:椋尾 篁

企画:小松原 一男

音楽:間宮 芳生

声優:(保留)

発表年:1982年

製作国:日本

評価:B ★★★★くらい

■雑記:
商業作品ではない自主制作作品なので、
作りが丁寧で原作に忠実。
(管弦)楽団の演奏場面も、音楽に合わせてよく動く。
(アニメ『のだめカンタービレ』みたいな、演奏シーンのがっかり感はない)
三毛猫、かっこう、狸の子、野鼠の母子との絡みもユーモラス。
子鼠が母鼠の周りを駆け回るのは『パンダコパンダ』を思い出す。
良作なんですが……、面白いか面白くないかで言えば
あまり面白くないかなぁ。観る価値は大ですが。
ベートーベンの肖像画が、どーみても石森章太郎
交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」』の演奏するんですが、
楽団員をどー数えても20名強くらいしかいないんですが、
そんな少人数でも大丈夫なのか私にはわかりません。
坊っちゃん』のマドンナみたいな女性ヴァイオリニストが、
ゴーシュに気があるのかないのか……。
楽長が『のだめ』の千秋真一並の耳の持ち主で、三人いるチェロの中で
ゴーシュにだけダメだし。
映画館の無声映画に楽団が音をつけているんですが、
初期のカートゥーン・アニメーションみたいな映画。
紅の豚』でポルコが映画館で観ているカートゥーン・アニメの場面が好きなんですが、
それと似ていて、宮崎監督に影響を与えたのかな?
田園風景と音楽の調和、動物達とのふれあいにより自分も成長。
ゴーシュがちょっと乱暴なんですが、ほっと安心できるアニメかな。

 

分類:アニメ>テレビ

■題名:イーハトーブ幻想~KENjIの春

監督:河森 正治

演出:佐藤 英一

キャラクターデザイン・作画監督:岸田 隆宏

音楽:上々颱風

発表年:1996年

製作国:日本

評価:保留

■雑記:
河森正治監督といえば『マクロス』なんかのイメージで、
ロボット、SFって感じで
宮沢賢治の田園・星・石・妹・などなど、
なんかの世界と合わないんじゃないかと、CGも多用しているみたいだし……
と思ったらビックリ! コレが凄い出来!!
詩的で美しい賢治の心象世界。
これは、宮沢賢治の作品のアニメ化ではなく、
宮沢賢治自身の半生のアニメ化。
どこまでが事実と一致するかは置いておいて、
人間宮沢賢治が描かれています。
学校の先生時代の、生徒との交流。
妹トシ(ちゃん感激!うそ)との兄妹愛。
父親との対立と、同じ道を進む同志と思っていた親友との別れ。
農民の貧困と、質屋で金持ちの息子の自分との葛藤。
故郷(岩手)の田園風景の美しさ。
などなどを圧倒的な映像美で見せます。

この作品も、アニメ『銀河鉄道の夜』と同じく
登場人物がますむらひろしの擬人化した猫。
制作が同じグループ・タックってのもあるのか?
犬に擬人化した人物も出てくるけど、
銀河鉄道の夜』と違って人間(の姿・顔)が出てこないので統一感はある。
感情が高ぶると突然ニャッとネコの部分が顔を出す。

妹の声が國府田マリ子なんで、なんか(画面から浮いていて)エロいです。
セロ弾きのゴーシュ』と『銀河鉄道の夜』は、女っ気が殆ど無かったので。
さすが元祖妹萌え
石森章太郎の姉も若くして亡くなったんですが、
宮沢賢治の妹も若くして亡くなります。
その若いままのイメージが永遠に封印されて萌えに昇華されるのか。

貧乏で盗みを働いている生徒に、
どこまでも真っ直ぐ歩こうと誘い、
ズンズンズンズン山越え谷越え川越えて崖で止まり、
ここまで一緒に来たなら俺たちゃ兄弟だ。
兄弟だから、おまえに不自由させない、なんでもくれてやる。
給料も全部やる。それで足りなければ借金してでも金をやる。とか
ほっ惚れるぅぅぅアニキィィィ

星々や歯車、数々のファンタスティックな宮沢賢治の童話的世界。
天然というか賢治の純真無垢な行動が、気ぐるい、奇行に映る。
一見純朴な農民の陰険さ。などなど

一般的に、今だと河森監督っていうと
マクロスF』や『創聖のアクエリオン』が代表作になるんだろうけど、
私は、『イーハトーブ幻想』や『地球少女アルジュナ』の方が大好きです。