サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その151 押井守の御先祖様万々歳!

『花束みたいな恋をした - 土井 裕泰』は人気の恋愛映画なんすが、
終電を逃した見知らぬ男女四人が深夜カフェで好きな映画について語るんすが、
浅い知識で盛り上がる男女と押井守を見つけて盛り上がる男女に別れる場面の
会話部分は私は面白くて好きなんすが、それ以外は普通かな。
主人公達の世代からいって押井守を神と崇めたり認知してるのを疑問に感じるし、
二人の趣味が一般人からするとマニアだけど、
マニアからすると有名なのしかチェックしてないように思えるような……。
(※個人の感想です)

押井守監督作品といえば、
話がわけわからなくて(難しくて)つまらない、
冗長で眠くなる――
などとお思いの方も多いでしょうが、この作品(『御先祖様万々歳!』)は違います!
いや同じだ。と言う方は押井作品は合わないので、
無理して観ないほうがいいです。
押井アニメって、その面白さに気づき嵌るともう抜け出せない。
マニア、信者になってしまう人も多数。
だから近年、駄作や作品がヒットしなくても
一定数の支えるファン(マニアや信者)がいるから、作品を作り続けられる。
押井監督作品が観たい! その気持ちはわかります。
なんか中毒性があるんですよ。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や
機動警察パトレイバー THE MOVIE』『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE
などの傑作も必観なんですが、
その実験的な演出、奇抜なストーリー、変態的な作画から、
『御先祖様万々歳!』をお勧めしたいんですよ。
隠れた名作!


標題:押井守の御先祖様万々歳!

分類:アニメ>OVA / 映画

■題名:
御先祖様万々歳!
MAROKO 麿子

監督・脚本:押井 守

キャラクターデザイン・作画監督:うつのみや さとる

音楽:川井 憲次

声優:
古川 登志夫
勝生 真沙子
緒方 賢一
鷲尾 真知子
玄田 哲章
山寺 宏一

ナレーター:永井 一郎

発表年:1989年~1990年

製作国:日本

評価:A ★★★★☆

■内容・雑記:
ストーリーは、
東京近郊、湾岸の埋め立て地の高層マンションに住む核家族のもとに、
突如、孫娘を自称する美少女が未来からやって来た。
表層的には平和で、どこにでもいる一般的な普通の家族(家庭)が
少女の出現により、
血縁関係、人間関係の矛盾に直面し崩壊へと向かうホーム・コメディ?

<登場人物>
四方田 犬丸 (古川 登志夫):
金属バットで家父長主義(父権主義)の打破を目論む現代少年。うそ
バットの素振りは
『新・必殺仕置人』の虎(藤村富美男)並みの破壊力。うそ
(後で追記予定)

四方田 麿子 (勝生 真沙子):
未来からやって来たという(自称)犬丸の孫娘。
セイタカアワダチソウの花のような
黄色い帽子と服がトレードマーク。
セイタカアワダチソウが、帰化植物外来種)というのにも何か意味が……。
麿子が未来からやって来るのに使ったというタイムマシン(Kodak の飛行船)も黄色。

四方田 甲子国 (緒方 賢一):
犬丸の父。
メタルフェイスのドライバーで犬丸の金属バットに対抗。
(後で追記予定)

四方田 多美子 (鷲尾 真知子):
犬丸の母。
(後で追記予定)

室戸 文明 (玄田 哲章):
未来から麿子を捕まえに来たタイムパトロールで、
その正体は犬丸の息子であり麿子の父・四方田犬麿。
(映画『MAROKO 麿子』では、正体を明かしていない)
サングラスに赤い全身タイツで奇妙な動きは、
タイムパトロールを自称する危ないおじさん。
(Coke の)赤色がトレードマーク。
(本当か嘘か)母であり娘である
麿子との血塗られた宿命を断ち切るべく、
平和なホームドラマとしての物語を破壊し終局へ導く。

多々良 伴内 (山寺 宏一):
多美子が雇った興信所の探偵。
カメラ好きで、容姿がアラーキー


スタジオぴえろ10周年記念作品らしいです。
東宝創立50周年記念作品の『幻の湖』って例もありますが、
よくまぁ、こんな内容のアニメを10周年記念で作ったなぁ。と(褒め言葉)
1980年代当時のスタジオぴえろって、
現在の京アニくらいのステイタスあったんですよ。

まず面白いのは、最終話を除く1~5話のアバンタイトル
鳥類の面白い特殊な生態を説明。
一見滑稽に見える鳥の生態も、これから始まるホームドラマ
人間の家族関係にも当てはまるんじゃないのか――との問いかけなのかな。

次に面白いのは、場面展開が無いというか、ほぼ同じ場所で物語が進むこと。
1話「悪婦破家」は、マンションの一室
2話「酒池肉林」は、一戸建て住宅の一室
3話「虎視眈眈」は、探偵事務所、アパートの一室
4話「捲土重来」は、浜茶屋の前
5話「一蓮托生」は、朽ちたドライヴ・イン
6話「胡蝶之夢」は、立ち食いソバ屋

主要人物意外のキャラクターが、まったく登場しないのも凄い演出。
顔がでるモブキャラクターは、
Coke の自販機そばにいた小学生のガキくらいかな。
銭湯で気持ちよく歌を歌っていたヤクザは背中(倶利伽羅紋紋)だけしか登場しないし、
喋ってる相手が声だけとか(立ち食いソバ屋の亭主)
元住んでいたマンション近くまで乗せてくれた清掃車の運ちゃんも
顔が見えないし。

演劇や舞台みたいに、または小津安二郎映画のフィックス画面みたいに、
固定された場所での、状況説明的、心情説明的な台詞過多な演出。
(つかこうへいの演劇とかの影響があるのか?)
その台詞の長さ、薀蓄、揶揄、機知に富む表現など、
だれが脚本やったのかなぁ。と思ったら押井守本人でした。
押井脚本は面白くないと思っていたので意外。

作画も、
新房昭之監督の演出なら、口元を映さず止め絵だけで、
説明的台詞のみで物語を進めるような場面でも)
うつのみやさとるの作画が動きまくりなんですよ。
これがまた凄く良く動く!
萌えアニメなんかとは対極の癖のあるキャラデザですが、
アニメーションの、絵が動くことの面白さを再認識させてくれる。
キャラの手や腕の関節部分なんか見ると、人形の球体関節みたいで、
この物語の登場人物は、実は人形でコレは人形劇なんだ。
といっているみたいなキャラデザ。

うる星やつら』のアンチテーゼとして考えられた作品らしいです。
声優もアニメの『うる星やつら』と被っている人がほとんど。

■感想:
オープニングの鳥類の話も無いし、最終話「胡蝶之夢」は蛇足かな。
最後の、犬丸が飛行船を追いかける場面で、
四方田一家が最初に住んでいた高層マンション近くの空き地を
犬丸が走りぬけ、力尽き倒れるですが、
それまでに出てきた一軒家や浜茶屋なんかが朽ち果ててあって……、
犬丸が追いかける黄色い蝶(飛行船)は、
それまでの出来事は蝶の見た夢、胡蝶之夢なんだみたいなことかも。

立ち食いソバ屋で食い逃げしようと長話するシーンとか観ると、
すすめ!!パイレーツ』の「史上最大の生中継の巻」を思い出す。


『御先祖様万々歳!』と間違って
『御先祖賛江』を観ないように……。
(いやぁ、観てもいいですよ。御先祖賛江もわるくないです)


■おまけ

2022年10月より『うる星やつら』の新作テレビアニメが始まるみたいっすが、
今頃やっと『うる星やつら オンリー・ユー』を観たっす……。
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は五、六回観てるんすが、
『オンリー・ユー』は昔に部分的にちょっとだけ観ていて、
録画してありいつでも観れるっていうことで後回しにしていて、
評価の高い『ビューティフル・ドリーマー』と違い、
1980年代のテレビアニメ『うる星やつら』の延長線上にある
『オンリー・ユー』にそれほど興味が無かったもので……。
まぁ、40年近く前のアニメなんで今観るとけっこう辛いけど、
1980年代当時に観ていたら楽しめたんじゃないかな。
あたるを巡りラム(ラム星)とエル(エル星)が宇宙で全面戦争と
ビューティフル・ドリーマー』の永遠に続く学園祭前日
ってのよりスケールはデカいけど、
11年前の約束を一途に守る純真な王女エルかと思ったら、
銀河中の美少年を冷凍保存コレクションしているサイコパスだし。
でも、1980年代アニメ『うる星やつら』の面白さって、
メガネ(千葉繁)の薀蓄や饒舌、ミリタリー趣味や破茶滅茶なドタバタなど、
押井守の演出の面白さだと思うんで、
新作の『うる星やつら』は漫画原作準拠になるのかな。


分類:アニメ>映画>ラブコメ

■題名:うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

監督・脚本:押井 守

演出:西村 純二

キャラクターデザイン:やまざき かずお

作画監督
やまざき かずお
森山 ゆうじ (森山 雄治)

スタッフ:
山下 将仁
板野 一郎
丹内 司
本橋 秀之
佐藤 道雄

美術設定:
小林 七郎
森山 ゆうじ (森山 雄治)

音楽:星 勝

声優:
古川 登志夫
平野 文
島津 冴子
神谷 明
千葉 繁
村山 明
野村 信次
二又 一成
杉山 佳寿子
田中 真弓
安西 正弘
鷲尾 真知子
永井 一郎
池水 通洋
西村 知道
緒方 賢一
佐久間 なつみ
藤岡 琢也
島本 須美

発表年:1984

製作国:日本

評価:S ★★★★★○

■雑記:
1984年に公開された劇場用アニメは、
風の谷のナウシカ
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
など名作が重なっているんですが、
当時の私は、『ビューティフル・ドリーマー』だけ
映画館に観に行かなかったんすよ。
当時の私は漫画至上主義で、
テレビアニメの『うる星やつら』はたまに観るくらいで、
それほど興味がなかったんです。
でも、私の周りの友人達の(アニメの『うる星やつら』に対する)評判が高くて、
私もテレビアニメを観てみるんすが、どこが面白いのかいまいちわからず……。
だから、映画館に『ビューティフル・ドリーマー』を観に行かなかったんすが、
劇場公開と同時にビデオソフト化されたのを友人の一人が購入したので、
それをダビングさせてもらったので、わりとすぐに観ているっす。
友人達が『ビューティフル・ドリーマー』を観て、
凄い凄いと騒いでいるのを横目に、当時の私は冷めた目で、
どこが面白いんだ、このアニメ……。って思っていたかな。
(当時の私は、宮崎駿監督のアニメくらいしか認めていなかった)
それから10年以上経って、私がアニメを本格的に観るようになって、
機動警察パトレイバー THE MOVIE』『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』や、
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観て、
押井守作品の面白さがわかってから『ビューティフル・ドリーマー』を再び観て、
その面白さをやっと理解出来ました。 


■おまけのおまけ

天使のたまご』について
2009年1月に書いた駄文に少し修正・加筆しただけっす。

私は寝つきが悪いんすよねぇ。
20歳前まではそんなことはなく、
布団に入って5分くらいでいつも高鼾……。
でも今は布団に潜っても1時間、2時間しないと寝れない。
そんな私でも、観ているととても眠くなるアニメがあるんすよ。
それが『天使のたまご - 押井 守』……。
最初、頑張って観るぞうと思うんすがしだいにまぶたが重くなり、
なんかいつも45分頃の巨大な鳥(天使?)の化石のところあたりで
異様に眠くなって我慢できなくて寝ちゃうんすよねぇ。

いや、このアニメ凄く出来は良いんすよ。
小林七郎の美術最高! (2022年8月25日に逝去)
菅野由弘の音楽最強!
天野喜孝の繊細なキャラデザが名倉靖博作監で動く驚異!
哲学的な意味合いはそれほど無いとは思いますが
メディテーション・アニメとしては良いんじゃないかと……
心地良い眠りを招きます。
注意点は映像かけっぱなしで寝た場合、
少女の叫び声でビックリして起きてしまうかも。

あと、いもしない影の魚を銛で突こうとする大勢の漁師?
のシーンがとても印象に残るアニメかなぁ。
魚とか鳥とか意味があるらしいんすけど
バカな私にはさっぱり……。
結局、たまごの中身は?
……オバQでしたってことはないよね。
少女革命ウテナ』のチュチュとか。

「あなたはだあれ?」
ウルトラセブン』からの引用なのかな
おにいさまへ… - 出崎 統』でも幼い奈々子が言っていたセリフだけど。
いや、まったく関係ないと思いますが。