サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

気になるもの目録 橋本忍の幻の湖

ゴールデンウィーク(黄金週間)は、
映画会社(大映)が集客目的で作成した宣伝用語らしいんすが、
そのゴールデンウィーク中に私が観た映画は
ゴジラ生誕70周年記念作品の『ゴジラ-1.0 - 山崎 貴』
水木しげる生誕100年記念作品の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 - 古賀 豪』
そして……
東宝創立50周年記念作品の『幻の湖 - 橋本 忍』なんすが……。
ゴジラ-1.0』は、山崎貴監督の培ってきた良いところが全て出ている感じで
文句無しの作品でした。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、出来の良い作品なんすが
私が横溝正史原作の映画やドラマ作品、因習村系の作品を沢山観ているせいか
話がそれほど面白く感じなかったんすが、
どこら辺が隠れた大ヒットになった要因なんすかね?
水木とゲゲ郎のBL(カップリング)的なのを妄想する腐女子に受けたんすかね?
私的にはキャラデザがあまり好みじゃなかったかな、
アニメ『墓場鬼太郎』とかのもっと大人向けのキャラデザの方が好きなんで。
最後の方の血桜による原発みたいな狂骨の怨念による永久機関とか面白くて好きかな。
ゴジラ-1.0』『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は
みんな知ってて語り尽くされていると思うし、
もう何回か観てから「好きなもの目録」に書くつもりですが当分先です。
なので、迷作の『幻の湖』をお届けします……。苦笑


標題:幻の東宝創立50周年記念作品 橋本忍の幻の湖

分類:映画>邦画

■題名:幻の湖

監督・原作・脚本:橋本 忍

特技監督:中野 昭慶

音楽:芥川 也寸志

出演:
南條 玲子
隆 大介
長谷川 初範
光田 昌弘
かたせ 梨乃
デビ・カムダ
室田 日出男
下絛 アトム
谷 幹一
北村 和夫
仲谷 昇
菅井 きん
杉山 とく子
星野 知子
関根 恵子 (高橋 惠子)
宮口 精二
大滝 秀治
北大路 欣也

発表年:1982年

製作国:日本

評価:不能

■内容・雑記:
『幻の湖』は、日本を代表する脚本家の橋本忍が手掛けた難解なカルト映画として
有名なんで昔から観たかったんすよね。
観る前の想像では、愛犬を殺されたソープ嬢(昔で言うトルコ嬢)が
愛犬を殺した憎い相手を包丁を持って追いかけているうちに
戦国時代そして宇宙へと時代と空間を超えていく
2001年宇宙の旅』的な壮大な物語だと思ってたっす……。
そんな難しい映画じゃなかったっす……
思い込みが激しいメンヘラ女が愛犬を殺された恨みからストーカーになる
わかりやすいバカバカしい話っす。
『幻の湖』を観た前日に、
『地図のない町 - 中平 康』を観ていて、
社会派の作品でカットバックを多用した真犯人が二転三転する正当な映画なんで、
とても同じ脚本家による作品とは信じられなかったっす。うそっす知ってたっす。

滋賀の雄琴トルコ嬢源氏名お市南條玲子)は慣れない風俗業に心が疲弊していたが、
野良犬のシロを飼い一緒に琵琶湖の湖畔をマラソンすることで心が癒やされていた。
ラソン中に不思議な笛の音に誘われ、
尾坂道子(お市の本名)は謎の男(隆大介)と出会い運命を感じる。
そんな折、シロが何者かに殺される。
怒り狂った道子は犯人を執拗に捜しまくり、
東京にいる有名な作曲家・日夏圭介(光田昌弘)だと突き止める。
談判しようと日夏との面会を試みるも阻まれ、
「憎い、日夏が憎たらしい。いや、東京中の人間がみんなで日夏を庇っている」
と逆恨みし顔もわからない日夏を謎の男だと思い込んだ道子だが、
東京で偶然にもトルコ嬢仲間だったローザ(デビ・カムダ)と再会し、
米国の諜報員らしい彼女の協力により日夏の顔や住所を知り接触しようと
ランニング中の日夏を追いかけるが見失い敗北感で茫然自失。
雄琴に帰った道子は懇意にしていた銀行員の倉田修(長谷川初範)が
川崎に転勤することを知り、自分も彼の後を追って川崎のトルコに移ることになり、
そこで『トラック野郎』の桃さんと出会う……うそっす。
道子は倉田と琵琶湖の東岸をドライブするうちに結ばれる。
謎の男と出会った場所にシロの遺灰を埋めていた道子が
そこを再び訪れると謎の男・長尾が笛を吹いていて、
戦国時代の長尾の祖先と
織田信長北大路欣也)の妹・お市の方関根恵子)の侍女・みつ(星野知子)の
悲劇の愛の物語を道子に聞かせる。
道子はみつに共感し涙するが長尾への思いを断ち切り
倉田と結婚しトルコを辞めることを決意するが、
トルコの客として日夏が道子の前に現れたので、さぁー大変!
殺してやるぅ!とシロを殺した凶器の包丁で日夏を襲い、
逃げる日夏に追う道子の死に物狂いのびわ湖マラソンが始まる。
勝つのはどっちだ?
その頃、宇宙パルサー研究者の長尾は地球の衛星軌道上にいて、
船外活動で琵琶湖の直上に笛を放置して悦に入るが、
使い捨てられた人工衛星シャトルが切り離したタンク、ステーション建造時に出た廃棄物、
マモーの脳みそ、崩壊したラピュタの城、長尾が放置した笛、
宇宙に浮かぶ沢山のゴミ、スペースデブリは実はとても危険な存在です。

『幻の湖』はそんな難解な話ではなく、
つまらなくて観るのが苦痛とかでもないかな。
でも、監督の橋本忍の演出なのか、
主人公のマラソンや車での移動などを丁寧に……といえば聞こえが良いが、
たっぷりねっとりと映しているので凄い冗長なんすよ。
青山から玉川通りを走り抜け駒沢オリンピック公園へのマラソンとか
たっぷりじっくり見せるんすが、どんな意図が?
ラソン中のモノローグもチープに感じさせるし。
私はスポーツをする女性が好きなんで、
道子(お市)が走る姿を見ているだけでもエロくて厭きないんすが……。
道子役の南條玲子の顔は、大友克洋の描く日本人美女って感じ。
現代と戦国時代が舞台で、
道子がみつの生まれ変わりというか魂を継承しているみたいなのや、
道子が日夏を狂乱して追いかけるのとか、
長尾一族の晒し首やみつの逆さ吊りや万福丸の『食人族』みたいな串刺しの刑とか、
自身が脚本した『八つ墓村 - 野村 芳太郎』的なものを狙ったのかな?
森美也子が尼子の子孫で、洞窟内で美也子が辰弥を追いかけたり、
尼子の落ち武者にたいする惨殺とか。
野村芳太郎が監督していればもう少しは面白くなったんじゃないかな
『幻の湖』は……無理か。

そんな『幻の湖』は最近の作品にも多大な影響を与えているんすよ。
『どうする家康』で、お市の方の侍女・阿月がマラソンするのとか、
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』で、哭倉村の湖に浮かぶ小島の描写を観てすぐに
『幻の湖』で琵琶湖に浮かぶ竹生島沖島が象徴的に描写されていてるのに
インスパイアされてるのがわかったし、
みつがお市の方に言う台詞
「私はあの人と結ばれるために琵琶湖を北に向かい、この小谷の城へやって来たのです」は、
渚カヲル碇シンジに言う台詞
「僕は君に会うために生まれてきたのかもしれない」にもオマージュされてる……全て幻、冗談です。
犬の名前がシロなんで
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 爆走! 幻の湖』とか
橋本忍の霊を呼び寄せ自動書記で脚本を書いてもらって作られないかな。うそ