サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その435 小津安二郎

ちょっと前に「角川シネマコレクション」で、
犬神家の一族 (1976年)』が無料公開されてたんで
高画質のを視聴したっす。
犬神家の一族 (1976年)』は5回以上10回未満くらい観てるんすが、
ガラスや鏡などに映った細かい部分もよくわかって新鮮に感じ見入っちゃったっす。
何度観ても名作は厭きない。
んで、『どうする家康』をどうにか観続けているんすが、
第45回「二人のプリンス」で、
御所柿は、ひとり熟して落ちにけり、木の下にいて拾う秀頼」
っていう落首について秀忠(森崎ウィン)が自分のことが無視されているのを嘆く場面を観て、
犬神家の一族 (1976年)』で犬神小夜子(川口晶)が
「酷いわ! あたしのことなんか何にも書いてないじゃない……」と泣き喚くのを連想したっす。
「角川シネマコレクション」で、
『リング - 中田 秀夫』と『ガメラ 大怪獣空中決戦 - 金子 修介』も3、4年ぶりに観返したっす。
『リング』は映像が綺麗過ぎて、やっぱブラウン管テレビでビデオを観る方が恐いかも。
ガメラ 大怪獣空中決戦』は、
ギャオスが東京タワーに営巣する夕方の場面がやっぱ美しくて特撮史に残る名場面だなと思い、
『セクシー田中さん』の笙野浩介の父(蛍雪次朗)はまた『ガメラ』に出て酷い目に遭えばいいと思う。うそ
あと、「東映シアターオンライン」で『空海 - 佐藤 純彌』を初めて観たっす。
富士山?噴火での密教的な男女の絡みがけっこうサイケな表現だし、薬子役の小川真由美が妖艶だし、
ツトム・ヤマシタの音楽とか、中国ロケとか見応えはある。
『それから - 森田 芳光』も高画質で視聴したっす。
数年前に観たことがあるんすが、森田芳光が変な演出をしてるな……くらいで
あまり面白いとも思わなかったんすが、
観直すとレイアウト(画面構成)が凝っていて、
藤谷美和子森尾由美の着物姿も美しいし、路面電車内や遊郭での変な演出とか、
他の邦画では観られないものがあるのでけっこう良いなと思ったっす。
夏目漱石の『それから』は、私が20代の頃に読んだことあったんすが、
優柔不断な高等遊民の男の話がダラダラと続くなって印象だったと思うんで
映画化は難しいと思うんすが、よくやっている方だと思う。
書生役で羽賀健二が出てるんすが、出演者が問題を起こしても作品に罪が無いと思うんで、
村杉蝉之介出演作品が観れなくなるってことはないよね?


今年も戦争や病気などで有名人から一般人までたくさんの人が亡くなってるし、
日本は少子化で将来どーなるんすかねぇ?

農夫の妻
「じーさまやばーさまやったら大事ないけど、若い人やったら可哀想やな」
農夫
「ん~けど、死んでも死んでも、後から後から、せんぐりせんぐり、生まれてくるわ」
農夫の妻
「そーやな、よーでけとるわ」
小早川家の秋 - 小津 安二郎』

12月12日は、小津安二郎監督の生年・没年の月日で今年は生誕120年なんで、
2009年と2011年に小津安二郎作品について書いた駄文の再録っす。
作品を観返してないので間違ったこと書いてあるかもしれないっす。


標題:無

分類:映画>邦画

■題名:
晩春
東京物語
東京暮色
秋日和
秋刀魚の味

監督・脚本:小津 安二郎

脚本:野田 高梧

撮影:厚田 雄春

音楽:
斎藤 高順 (※『晩春』以外)
伊藤 宣二 (※『晩春』)

出演:
笠 智衆
原 節子 (※『秋刀魚の味』以外)
岩下 志麻 (※『秋日和』『秋刀魚の味』)
杉村 春子 (※『秋日和』以外)

発表年:
1949年
1953年
1957年
1960年
1962年

製作国:日本

評価:保留

■雑記:
※うそしか書いてません。

『晩春』
戦時中の重労働で、お嫁に行けない身体になってしまった娘。
体調も回復してきたので、行かず後家になる前にどこかに嫁がせようとするが、
潔癖症で、お父さん大好きっ娘なんで嫌がって、さー大変。
そんな娘をだまくらかして、熊太郎のもとへ……。
謎の男・熊太郎の正体とは?
そんな波乱万丈・複雑怪奇なストーリー。かな?

偶然、東京で再会した
再婚した京都の小野寺オジサマを、
「不潔よっ!汚らしいっ!!」
と罵詈雑言の言葉攻めプレイ。
それも仕方ない、このオジサマ、
上野の西郷さんの銅像の頭の上にとまったハトを空気銃で撃つのを見て、
「これじゃぁ、ウィリアム・ハトだ」と
今まで聞いたなかでも、一番酷いオヤジギャグをかます男。

なんかヒロインの紀子(原節子)、異様に男女間の仲に潔癖で
それでいて、父親の再婚話には嫉妬で鬼の形相。

最初、父親の助手・服部と娘が仲良さそうなんで、
くっつけようとしたら、
もう服部君は別の女の人と婚約していたでござるの巻。ニンニン
でもなんか、
「繋がったタクアンと、ヤキモチの有機的な関係は……」
とかの二人の会話や結婚前に紀子をバイオリン・リサイタルのデートに誘うなど、
二人とも満更でもないって雰囲気だったんですけど。

『晩春』で一番凄い場面は、やっぱ能のシーンかな。
ココは凄いっすよ!
父娘で能を観に行くんですが、客席に偶然(というか必然)
父の再婚相手と噂されている未亡人がいるんですよ。
(未亡人って響きだけで、クルもんがありますなぁ)
父娘の客席と未亡人の客席が離れているんで、
遠くから会釈で挨拶するんですが……
その挨拶した後の、原節子の表情が怖いなんてモンじゃないっす。
能の餓沙羅の舞で、ガサラキが紀子に乗り移った感じっす。ウソ
このシーン、結構長くて普通ならタルイ感じなんですが、
嫉妬の炎が燃盛る紀子の心情がよく出ていて
ココだけでも、小津安二郎ただもんじゃないってのがわかるっす。
私だけかな、こんなマイナーな監督知ってるの。
えっ!世界的な映画監督だったんすか、スンマセン。

あと叔母さん役の杉村春子が、好い味だしてるっすよねぇ。
小津映画に杉村春子あり……。
それより拾ったがま口財布、警察(とか交番)に届けたんだろうか?
それが気になるっす。
がま口拾った直後、通りかかった警官から逃げるように早足で去る
田口まさ(杉村春子)。
ありゃ、絶対ネコババしてるな。

ら~じ・PonPonって、『東京暮色』だけじゃなく
『晩春』でも会話に出てきたんすけど、
妊娠(任天堂信者のことじゃない)のことを、
お腹が大きくなるって意味で使っているみたいですが、
昔の流行言葉なのかなぁ。それとも小津監督が生み出した造語なのか?

りんごを剥くと目頭から涙がでませんか?


東京物語
東京××は悪くない……。
むしろ名作だとは思うんですが『東京物語』。
小津映画で私の好みは、『彼岸花』以降のカラー作品かなぁ。
BSプレミアムの『東京物語 (デジタル・リマスター版)』を観て思う。
今回ので『東京物語』観るの三回目かな。
古い日本映画、フィルムの傷は酷いし音声は聴き取り辛いし
だったのが魔法のように修復してある。
映写時のガタツキもないし。
他の古い名作も、どんどんデジタル・リマスターしてくれっす。

放送始まる前に、チョットだけ『しゃべくり007』ってのを観てから
東京物語』を観たんで、
東山千栄子くりぃむしちゅー上田晋也にみえて困る。
原節子は二の腕太いなぁ。といつも思う。
あと杉村春子の演技が凄すぎるってのも。
もう少し美人だったら、余裕で紅天女演じそう。

笠智衆東野英治郎ら三人でおでん屋で息子・娘達への愚痴。と
おでんは悪くない……。

東京より尾道の風景の方が印象に残る。

平山とみ(東山千栄子)が亡くなる原因は
慣れない長旅や東京での環境の違いによるストレス、
熱海の旅館の騒がしさと思われるが、
本当の原因は物語の冒頭、空気枕を荷物に入れたか入れないか揉めたこと。
『このクソ親父、何十年と連れ添ってるが、もー我慢の限界っ!
また自分の思い違いを私のせいにしやがって(怒り)』
この時、脳の血管が切れたんだと思います。うそ

オセチやカンニングであれほど騒いだ世間やマスコミが、
雪印や老舗の店を吊るし上げたコメンテーターや識者が
それに比べると某企業に対して及び腰なのは
やっぱスポンサー、お金の力っすかねぇ。

東京物語』は悪くない。あと、おでんは悪くない。
悪いのは……
(※この駄文を書いた当時、東日本大震災による東京電力福島第一原発事故が起こって、
東京電力の責任問題があったので、『東京物語』と東京電力をかけたんだと思うけど、
たいして面白くないのでスンマセン)


『東京暮色』
その昔、単身赴任中に、部下の男に妻を寝取られ、
子供三人を男で一つで育ててきた真面目な銀行家。
長男は事故で死に、長女は嫁に、次女と二人で暮らす雑司ケ谷。
そんな折、長女が孫を連れて出戻ってきた。
どうやら夫との仲が悪いらしい。
次女もこの頃、様子が変だ。
でも仕事(パチンコ)が忙しくて、そんな家のことなんか構ってらんないよ。

小津映画の中では異色といわれる本作っすが。
そのダークな重い雰囲気が、東京の寒い冬を感じさせて
他のほのぼのとした小津映画と違った味わいがあります。

長女(原節子)の夫・沼田のもとに、父(笠智衆)が会いに行くんですが、
「……子供より孫の方が可愛いといいますが、
愛情の隔世遺伝なんてものがあるんですかね。そんなのは気味が悪い、
やはり親子の愛情はプリミティブで……」
と、解かるような解からないような言葉で煙に巻かれる。
沼田は、大学教授かなんかなんですが、
丸善で洋書を手に入れて云々……とかあって、
丸善って昔からあるっていうか有名なんすねぇ。
大学いったら、もう翻訳しているヤツがいる……。
みたいなこと言ってるんですが、ちゃんと翻訳の許可もらってるんですかね?
翻訳でもやれば金になるとか言ってたんで、
翻訳して本にして売るとか、雑誌に載せるんだろうに。
『それから - 森田 芳光』のレイアウトが小津安二郎っぽさも感じるんすが、
長井代助(松田優作)の友人の寺尾(イッセー尾形)も翻訳して稼いでいたんで、
昔は勝手に翻訳するのが当たり前だったのかな?

まぁ夫婦喧嘩は犬も食わないんで、ほっといて
鰻食ったり、パチンコやったり、小市民の幸せを満喫していると、
妹や友人が、お前のところの次女がお金借りに来たゾ。と謎の言葉。
いったいそんな金、何に使うのか?
その頃、次女は、ある男を捜して東京中を東へ西へ。
(いや五反田近辺なんすけど)
繁華街に深夜までいる次女は怪しまれ、警察に御同行願いますと。
なんかその警察署に、
女の腰巻を盗んだ異常に声の高い変質者がいるんですけど。
昔からいるんすね、下着泥棒。
その男、盗んだ腰巻を性的な目的に使うのか、
それとも自分でそれを身に着けるのか(女装趣味)
凄く興味あったんすが、すぐ身元引受人で姉が来ちゃって場面転換。
小津映画って、そんなストーリーと関係なさそうなコネタ、
ちょっとした演出が面白くて。
浦辺粂子のモノマネをする鶴ちゃんのお店(ウソ)での会話が、
積雪量の単位を間違えて、350km積もってるとか、
それじゃぁ、東京から名古屋までの距離雪が積もってることになる、
キロとセンチの間違いだな。とか
何気ない会話の中に、その後のストリーの複線があったり、
登場人物の立場や性格、人間関係が見えてくる。

次女は実は、妊娠していて、その孕ました男を追っかけていたんすが、
運命の悪戯か、恋人の男性がよく行く雀荘の女将が
実は生き別れた(男と逃げた)母親だったので……
なんか最悪のタイミングでの母娘の再会。
父や姉と比べて、淫らで不潔な私(次女)は
母と浮気相手の子供で、父とは血が繋がっていないのでは?
生まれから……、血から汚れているのでは……
という疑心と不安。
自分の存在の否定、
傍にいて欲しい恋人は行方不明(逃げ回っている)。

雀荘での会話も最高に面白いし。
麻雀やりながら、次女の噂話をするんですが、
「英語で言うところのら~じ・PonPon……」
この台詞の節回しが面白くて、んで麻雀なんでポンするですよ。

あと赤ちゃんが怖い、可愛い赤ちゃんの映像が怖く感じるんすよ。
結局、次女は子供を堕ろすことになるんですけど、
堕胎手術の後、家に帰ると姉の子供(赤ちゃん)がいて、
這い這いでアップでドンドンこちらに近づいてくるんすよ。
堕胎手術のシーンの直後に、赤ちゃんの映像を直ぐもってくるとこなんか
残酷で怖い演出っすよ、小津監督。

あと、孕ませて逃げている男が、なんかナヨナヨしてて気持ち悪いオタク系?
恋人が電車に投身自殺したであろうことを薄々感じながら
珍々軒で一人黙考。
ココの酒代、ボクが払うのかな……。

小津映画に珍しく、男と逃げた母役で山田五十鈴が出演してます。
山田五十鈴、いうまでもなく上手いんですけど、
最後、北海道に行くことになり、
駅で列車の中から窓の外を、一生懸命何度も何度も見回すのがイイんすよ。
長女が見送りに来てくれるかもしれない。という一縷の望み。
小津演出って、台詞や動作を何度も何度も繰り返すんですが、
それがその人の心情を表すっていうか、
伝わってくるんですよね気持ちが。で自然と感情移入しちゃう。

生まれてこなければよかった。
生まれ変わりたい、もう一度やり直したい……。
リセット・セーブ機能が無いなんて
人生なんて欠陥ゲームよっ!! うそ


秋日和
友人の七回忌で、未亡人とその娘のあまりの美貌に
悪巧みをするオヤジ三人組。
貞淑な未亡人の赤貝に、魔の手が伸びるっ!
あぶないところを、お寿司屋の娘に助けられ
逃れ逃れて伊香保温泉。
榛名湖の畔で食べる茹小豆 最高ぅ~!
そんな映画、あけびより。うそ

なんか小津監督自作のパロディーになっているようです、この作品。
よく言われるのが、晩春の父を母に置き換えたとか……。
カラー作品になってから、
モノクロ作品の枯れた感じから、ちょっと下品な感じに。
母と娘が主役なんすが、真の主役というか裏の主役は
オヤジ三人組みと、娘の親友・寿司屋の百合ちゃんかな。

オヤジ三人組みの一人・平井太郎
(※元の駄文の前置きに江戸川乱歩のことがちょっと出てきたので)
じゃなくて平山精一郎は未亡人(原節子)と結婚できると考えると、
とある場所が痒くなり、トイレに駆け込むヤモメの大学教授。
最初、若い娘の方が好みだったのに、
ちょっと惚けた鈍感なエロおやじです。

未亡人は若い頃、薬屋の看板娘で、
それを目当てに、学生時代のオヤジ達が通ったらしいっす。
たいして病気でもないのに。
そんなライバルの多いなか、死んだ旦那がハートを射止めたんすが、
きっと……、ボクの病は薬では治りません。アナタじゃないと。
とか言って落としたんだと思います。勝手に考えた裏設定っす。
しかし奥さんが美人過ぎると旦那は早死にするらしく、
現に、ブスな料亭の女将の旦那はピンピンしているという、世の中の仕組み。

あと娘役の司葉子、美人だなぁ。
なんか司葉子と比べると、さすがに原節子の顔濃いなぁ。
湖畔で司葉子といえば、『乱れ雲 - 成瀬 巳喜男』思い浮かべます。
これがまた色っぽいんすよ。
亭主を轢き殺した若い男を憎悪するが、しだいに若い男に惹かれ
身体が疼くのゥンってな熟女の悩みが。うそ

小津映画は色々特徴があるんですが、詳しいことは評論家とかに任せて適当に。
画面が固定されていて、滅多にパンニングもズーミングもないんですが、
レイアウトがしっかり決まってて、
観ていて安心できるというか疲れないんすよね。
小津映画に慣れると、他の映画観れなくなるんですよ、画面が動き過ぎて。

あと場所移動のシーンなんかで、
茶の間から二階の部屋に行くときなんか、
普通なら、茶の間を出たら、次はもう二階の部屋の場面でいいと思うんですが、
なんか廊下のカットを挟むんですよ。
それがなんか映画にリズムを生んでいるっていうか。
会社で、訪問者に対する応接の場面でも、
訪問者がトイレに行く場面で、わざわざ、
廊下を歩いたり、小走りになったりする訪問者のシーン入れるし。
それがなんか、その人の性格が現れて面白いんですが。

小津映画=高尚と考えて敬遠している人は、
コレとか『お早よう』とかのちょっとお下品な作品をお勧めします。


秋刀魚の味
山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編」で、
秋刀魚の味 - 小津 安二郎』を観る。
私は、5年ぶり(※当時)2回目の視聴かな『秋刀魚の味』。

ストーリーは、
戦前は漢文の教師として確固たる地位を築いていたひょうたん(あだ名)は、
戦後妻を亡くし、一人娘と二人きりで
戦後の復興にとり残された街の狭間でラーメン屋を営んでいた。
ある時、駅のホームで捨てられた新聞を拾っているところを、
かつての教え子に見られ、哀れにおもった教え子達が、
ひょうたんを囲んで同窓会をする流れに。
教え子達は今では会社の重役などに出世。
鱧の漢字は知っていても、食べるのが初めてなんで感無量。
土産にウイスキーのボトルを貰うが帰りの車の中で全部飲み、
家(ラーメン屋)まで送ってもらう。
教え子達の間では、ひょうたんの娘は美人で有名だったが
ラーメン屋で出迎えた行き遅れの娘の姿と態度に
時代に翻弄され、時の流れの残酷さを痛感する。
かつて教え子達のアイドルだった自分(娘)のみすぼらしい姿を見られ、
昔は威厳のあった父(ひょうたん)の酔っ払い落ちぶれた醜態に涙する。
これもすべて大東亜戦争に負けたせい。
あの戦争に日本が勝っていたら、今頃私は、
ハワイで丸髷結った金髪の白人のメイドをこき使い、鱧ならぬハム喰ってたのに……。
現実は、近所で不味いと評判の支那そば作って一生を終える惨めな人生。
今日も、教え子の一人が、私達父娘を不憫に思って
金一封持ってくるし……私のプライドはっライフはもうゼロよっ!
──という話だったような、うん。確かに間違ってはいない。うそ

小津安二郎映画は面白い。
全然芸術作品ってことはなく、下ネタもありちょっと下品なとこもあるし。
平山(笠智衆)、河合(中村伸郎)、堀江(北竜二)の三人組の会話が面白いっす。
堀江は、娘ほど歳の離れた後妻を貰って
毎日バイアグラ飲んで励んでいたら腹上死しちゃうし。
河合は、大洋対阪神戦を観るために川崎まで来たのに
嫌よ嫌よと言いつつ飲み会に、
嫌いなひょうたんが出席するなら同窓会に出ない
と言いつつ出席するツンデレ
しかしバッキーとか名前だけなんとなく知ってるけど、
川崎球場で大洋、満員のお客さんでTV中継って時代なのか。
セ・リーグの優勝のかかった試合みたいっすが)
堀江が死んだっていう嘘話が、最後の縁談が決まるかどうかの
三人の会話の伏線になっているのが良く出来ているっす。
河合と堀江が碁を打っている場面で、盤面が碁石で埋まってるとこに
平山が現れ、チラっと見ただけで五分五分のいい勝負だ。
みたいなこと言うんですが、そーとーな棋力の持ち主っすよ平山。
どー見ても、盤面が白黒入り乱れて
碁石で埋まっているなかで(地がほとんど無い)、
河合と堀江の二人は、それぞれ自分の打ちたいとこに打っていて
相手の打った手に応じてなかったので、終盤の打目つめだと思うんですが、
あの形勢不明の状況を一目で判断出来る平山はいったい何者。

最初の工場とかの場面が川崎らしいんですが、
小津映画の建物のカットって、なんか迫力があるなぁ。
絵になるっていうか。
長男夫婦の住む団地って、最寄の駅で
洗足池と雪が谷大塚って見えたんで石川台駅(池上線)なんだな。
とすると平山の住む家は川崎とか大田区あたりなのか?
秋刀魚の味』ってタイトルなんで、目黒区かと思ったんすが。
長男(佐田啓二)も、そんなにゴルフクラブ欲しかったら
Olympic 長原店で安いの買えばいいのに。
小津映画の団地描写で、隣の部屋に醤油とかお酒とか借りる場面が出てくるんですが、
トマトまで貸し借りする時代があったとは。
素直に頂戴って言えばいいのに、いつも借りるわよ。
とか言って返したことないのにアリエッティ

平山の長男の後輩・三浦は、なんとか友人の中古のゴルフクラブ
長男に売りつけようと奔走するんですが、中間マージンが欲しいんだろうなぁ。
それかよくある、自分ではそれほど欲しくないモノなんだけど
友人とかにやたら勧めて買わせて、自分も使わせてもらったり、
やっぱ買うほどではないな。と他人を人柱に使うタイプのちゃっかりさんだな。
奢りならビールお替り、トンカツをもう一皿注文するみたいなタイプ。
でも一番気に入ったモノ、好きなモノは手に入らないみたいな。
本命だった平山の娘が無理そうなんで、キープの庶務課の女の子に手をだしたら
実は平山の娘(岩下志麻)も、三浦のこと好きだったとか。
長男のアパートから帰る時、私(平山の娘)も一緒に帰ります。
ってなったとき、俺に気があるのに気付いていれば……、く、くそっ。

今回観たら、前観たときより細かい部分がよくわかってよかったっす。
台詞もほとんど聞き取れたし。
河合が小料理屋で、「入ったかな?」みたいなこと突然言い出すのも、
前の場面で、テレビのナイター中継でホームラン性の当たりがあり
歓声が上がっていたのに対してなんだな。とか
三浦がトンカツもう一皿注文してもいいっすか?みたいな場面で
その直後に長男が呼びボタンみたいなの押して(店員を呼んで)いるのがわかったし。

昔は、女の人は23、24歳が結婚適齢期なのか?
平山の会社の事務かな、女性社員が結婚して退職するみたいな話題を聞いた平山、
別のお局みたいな女性社員に、
君の子供はいくつ?だったか、旦那は何歳?みたいなセクハラしてんですけど。
尋ねられた女の人、どーせ私は独女だよっ!知ってて言ってるだろ、クソボケおやじ!
みたいな感じで、そそくさと部屋を出て行くんですよ。
(後で、平山に出すお茶とかには、鼻くそとか入れてるだろうなぁ)
今も昔も一人身には住み難い世の中。

長男と次男で、父親に対する態度(言葉使い)が違うんですが、
長男は一見丁寧で父を敬っていそうなわりに金借りるし(返すつもりなし)。
次男は口は悪いけど、父が風邪ひかないか心配し、姉がいなくなった家の炊事をする
心根の優しいチビでポッチャリ好き。

岸田今日子のママがいるトリスバーでの、
軍艦マーチにあわせての敬礼がやたら楽しそう。
加東大介は良い脇役だなぁ。名優
ラーメンと敬礼には厳しい修理工場のオッサン。

秋刀魚、鰺、鱧
さかなさかなさかな