サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その124 黒澤明と原節子

NHKラジオ「今日は何の日」で、
2015年9月5日に女優の原節子が亡くなった日
と言っていたので、
2015年11月末に訃報が伝えられた時に書いた記事の再録。
(2009年2月と3月に書いた『わが青春に悔なし』と『白痴』を纏めただけです)


日本映画の黄金時代を代表する大女優の
原節子さんは、
1962年公開の映画を最後に引退?をしているみたいなので、
42歳の若さで世間から姿を隠したんだなぁ。
原節子出演の代表作がどれかはわかりませんが、
小津安二郎監督と成瀬巳喜男監督の作品を観ればハズレは無いです。

今敏監督のアニメ『千年女優』は、
(第二次世界大)戦前・戦中・戦後の大女優が、
現実と映画(フィクション)を行き来する物語なんですが、
大女優のモデルになったのは、
原節子とか高峰秀子なんだろうなぁ。

原節子といえば、
小津安二郎の映画なんですが、
出演している作品が少ない黒澤明の映画を――。


標題:百年女優 原節子

分類:人物>映画>邦画>女優

■名前:原 節子 (会田 昌江)

出身:日本

生没年:1920年6月17日~2015年9月5日

職業:女優

評価:S ★未確定


分類:映画>邦画

■題名:わが青春に悔なし

監督:黒澤 明

出演:
原 節子
藤田 進
大河内 傳次郎
杉村 春子
三好 栄子
河野 秋武
志村 喬

発表年:1946年

製作国:日本

評価:A ★未確定

■雑記:
原節子が泥まみれ汗まみれになる映画って、
あまりないんじゃないかな。
生活苦、村社会の虐めに遭う原節子
でも、やっぱ小津安二郎映画とかの上品な原節子の方が魅力的かなぁ。
黒澤作品には珍しく杉村春子も出てきます。

終戦前はスパイで非国民の主人公(原節子)が、
終戦後は村での女性の地位向上などで
指導的役割を担うようになるってのが、
時代に翻弄されながら、
自分自身に悔いの残らない人生を送ってきたのが報われる
ってことなのかなぁ。
私は日和見主義の事なかれ主義なんで、
私が幸枝(原節子)だったら野毛じゃなく糸川と結婚して
姑との間が上手くいかず、
ザコンの糸川に不満たらたらな人生を送るっていう感じかな。
それだと黒澤明映画じゃなくて、成瀬巳喜男映画になっちゃいますが……。


■題名:白痴

監督:黒澤 明

音楽:早坂 文雄

出演:
原 節子
森 雅之
三船 敏郎
久我 美子
志村 喬
東山 千栄子
千秋 実
三好 栄子
千石 規子
左 卜全
岸 恵子

発表年:1951年

製作国:日本

評価:S ★未確定

■雑記:
これ(『白痴』)、なんか日本映画に思えないんすよねぇ。
音楽といい、フィルム(映像)といい、
なんかヨーロッパ映画って感じ。
森雅之原節子がなんか日本人の枠に収まらない感じ。

羅生門』と『生きる』の間の作品ということで、
黒澤監督の才能がほとばしっている。
4時間25分近くの作品を、2時間46分に切り刻んで短縮しても、
その凄さがわかるってのが驚異!

冬の札幌を舞台にしていることもあるのか、
吹雪や雪に閉ざされた室内の重苦しさ暗さが、
登場人物の心の重苦しさ葛藤をひしひしと感じさせる。
なんか映画の後半はゴシックホラーって感じなんすよねぇ。
身も凍る恐怖!ってのじゃなく、
宿命の悲劇っていう人間にはどうしようもない恐さ。
原節子演ずる那須妙子の鬼気迫る演技・顔の表情がほんと恐い(けど美しい)。
黒澤監督は、原節子になんか怨みでもあるんすかねぇ。
『わが青春に悔なし』の泥まみれの農婦役とか……。
まぁ決まりきった型を破らせようと、そういう役を与えたんだろうけど。
最後のあたりの森雅之三船敏郎が、蝋燭の灯りに照らされながら
永遠に誰の手も届かない場所に旅立っていった那須妙子(原節子)を、
二人で語り合いながら夜番するシーンは壮絶。
二人並んで会話してるだけなのに雰囲気が異様。
そして二人ともアチラ(キチガイ)の世界に……。

さっぽろ雪まつりなのか、
スケートしながら仮装行列するっていう場面があるんですが、
こんな昔からハロウィンっぽい風習が日本に入っていたんすね。
キリスト教のクラーク博士とかが居た札幌だからかな?

東山千栄子は、『東京物語』の物腰の柔らかいお母さん役のイメージが私にはあって、
『白痴』の口が悪いズケズケした母親役は新鮮でした。
久我美子は気品があるっすねぇ。

亀田欽司って白痴というより、
場の空気が読めず本当の事、皆が思っていることを言葉にしてしまい、
場の空気を凍らすって感じかな。
王様に「裸だっ!」と叫ぶ子供みたいに……。
(実際の人でいうと、漫画家の蛭子能収さんとか)

『白痴』の完全版が観たいなぁ。