サイグレアニマン

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好きなもの目録 その54 諸井誠の赤い繭と御者パエトーンとわが出雲

NHK-FMの『クラシックの迷宮』
「作曲家・諸井誠 没後10年に寄せて~NHKアーカイブスから」で、
『ラジオのための作品「赤い繭」(安部公房原作)』
入沢康夫の詩による「わが出雲」』
が放送されたんで、前に
『音楽詩劇 赤い繭』と『音楽詩劇 御者パエトーン』について書いたメモに
新しく『入沢康夫の詩による「わが出雲」』を追記したっす。


標題:諸井誠の音楽詩劇

分類:音楽>現代音楽>放送音楽

■題名:
ラジオのための作品「赤い繭」(安部公房原作) (日本の電子音楽 [3] 音楽詩劇 赤い繭)
OBSCURE TAPE MUSIC OF JAPAN VOL.3: MUSIC DRAMA "AKAI MAYU" (A RED COCOON)

作曲:諸井 誠

原作:安部 公房

声優:
芥川 比呂志
山岡 久乃
熊倉 一雄
東京放送劇団

音楽:
アンサンブル・エレクトロニカ
東京混声合唱

チェンバロ:竹前 聡子

オンド・マルトノ:高橋 悠治

ドラムス:猪俣 猛

指揮:若杉 弘

放送年:1960年

製作国:日本

評価:S ★未確定

■内容:
1960年10月27日放送。
諸井誠は、自分の美の範疇を極めていくタイプではなく、
自己を突き詰めて一つの道を行くというよりも、
メディア的(人間)というか、
その時その時の色んなもの、色んな方法、色んな表現法
っていうものを合わせ込んでいって、
場を作っていくという形で作品を書いていくスタイルを探求していた。
「赤い繭」(安部公房の世界)は、
居場所を失った人が何者かに管理されていって
完全な不自由に到達して、そこでひとつ極まる。
そこから先に革命的変化の起爆剤・切っ掛けがあるのか? ないのか?
片山杜秀談)

安部公房の「赤い繭」のラジオドラマ。
帰る家がない男が街をさまよい、自分の家を探し求め歩いているうちに、
肉体が解れ糸になり空っぽの繭(家)に変身する不条理劇。
BGMが現代音楽のカンタータで、
サウンドエフェクト(音響効果)が電子音。


■題名:
音の始源を求めて1 - 塩谷宏の仕事
音楽詩劇 ピュタゴラスの星

作曲:諸井 誠

詩:石原 達二

放送年:1959年

製作国:日本

評価:不明

■備考:
ピタゴラスの星 第一部:沈黙の環」の抜粋(10分くらい)だったのが、
新バージョンの『音の始源を求めて1』では、27分の完全版が収録されているらしい。


■題名:音楽詩劇 長い長い道に沿って

作曲:諸井 誠

詩:ヴォルフガング・ボルヒェルト

指揮:外山 雄三

声優:
水島 弘 (劇団四季
岸田 今日子
三井 淳子

放送年:1961年

製作国:日本

評価:不明

■雑記:
NHK-FMを聴きながら、うつらうつら夢心地でいたら、
「諸井誠 再発見~NHKアーカイブスから~」
『音楽詩劇“長い長い道に沿って”』
っていうラジオドラマ(とは違うけど)っぽいのが放送されていて、
身を入れて聴けなかったので、もう一度聴きたいなぁ。

諸井誠は、秩父セメントの創業者一族らしいです。
やっぱ人間て、もし才能(可能性)があっても、
金持ちや、文化的な教養がある家に生まれないと
才能が花開かないのかも……親ガチャってやつかな。
出発点が違うもんなぁ。

 

NHK-FMの『クラシックの迷宮』で
「音楽詩劇“御者パエトーン”~NHKアーカイブスから~」
を聴いたのでメモ。
諸井誠の音楽詩劇は他に、
「御者パエトーン」「わが出雲」などがあるらしい。
と知り、聴きたかったんすよね。

■題名:音楽詩劇 御者パエトー

作曲:諸井 誠

台本:木原 孝一

演出:前田 直純

声優・歌・他:
有川 博
高橋 昌也
砂原 美智子
大塚 周夫
七尾 伶子
栗林 議信
塚田 正昭
斎藤 江美子
劇団 青年芸術劇場

音楽:
NHK交響楽団
東京放送合唱団
東京混声合唱

指揮:
森 正
秋山 和慶

電子音響:NHK電子音楽スタジオ

放送年:1965年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:
1965年7月26日放送。
ラジオのための音楽詩劇とは、ラジオオペラとラジオドラマの中間を狙ったもの。
イタリア放送協会(RAI)が主催する国際番組コンクールの
イタリア賞に出品するため作られた。
「御者パエトーン」は、1965年のイタリア賞グランプリを獲得した。

エトーンはディオニュソスの宵祭で
こだまのニンフを垣間見て一目惚れ。
こだまのニンフを手に入れようとするが、
ゼウスとイーオーの息子エパポスのものだった。
エトーンは母クリュメネーに父は誰か訊くとアポローンだというので、
その事をエパポスに言うと証拠に太陽の二輪の馬車に乗って森に来い、
そしたら瓶いっぱいの葡萄酒とこだまのニンフを贈るという。
なもんで、パエトーンは父アポローンに強請って馬車を借りるが、
けっして馬に鞭を当てるな!っていったのに
流れ星にテンパって馬に鞭打ち馬車(太陽)が暴走!
恋と欲望の二つに盲目となったパエトーンは、
大地と海と空とを焼き滅ぼそうとした罪により、
ゼウスの雷に撃たれ死亡。
人間は決して神にはなれぬ。
神々の座を求むるなかれ。


関係ないけど、
山岸凉子の漫画に「パエトーン」てのがある。
エトーンとエパポスがレスリングをするが、
いつもパエトーンが負ける。
神(ゼウス)の血が流れているエパポスにはかなわないとみんなに言われ、
僕(パエトーン)はアポロの息子だというが
みんなから嘘つき呼ばわり。
証拠に日輪の馬車を借りてみんなを見返してやる!死亡フラグ
ギリシャ神話の漫画かな……って読み進めると、
それは最初だけで途中から原子力発電批判の漫画になるっす。
人間には完全に制御出来ない太陽(ギリシャ神話)を
原子力(現代科学)に模した話。
掲載当時、広瀬隆の『危険な話』とかが流行ってたんですが、
政府や電力会社の政治力や広報力などで
原子力発電は安全で効率的ってイメージが世間に広がっていたから、
原発反対は一部の人だけの問題って感じだったのが、
東日本大震災があって、やっと原発は危険とわかることに……
後の祭りだけど。
他見所は、山岸凉子の描く(アシスタントじゃないと思うけど)
ゴーストバスターズ
バック・トゥ・ザ・フューチャー
エイリアン2
そして『風の谷のナウシカ』の挿絵!

 

■題名:入沢康夫の詩による「わが出雲」

作曲:諸井 誠

声優・歌・他:
中村 義春
伊原 直子
曾我 栄子
三輪 勝恵
東京放送劇団

音楽:
NHK交響楽団
二期会合唱団

指揮:森 正

放送年:1970年

製作国:日本

評価:保留

■内容:
1970年10月29日NHK-FMで放送。文化庁芸術祭参加作品。
入沢康夫島根県松江市出身。
自分の育ちを巡る記憶と神話・伝説に描かれている古代出雲の虚構のイメージを
引っ掛けて添削し「わが出雲」に仕立てた。
寺山修司の青森と比較出来、寺山と同じく
お母さんの問題が重く出てくる。
詩人の分身である、自分探し故郷探しをする男(探求する男)、
入沢康夫の少年時代に亡くなっているお母さん、
この世とあの世、神話と現実を繋ぐ鳥、そういう登場人物が現れる。
雅楽、日本の古代歌謡、クラシック、現代音楽の諸々の書き方まで
諸井誠が派手で多様式的な盛り付けをしていて
自由でアナーキーな作品になっている。(片山杜秀談)

入沢康夫の詩による「わが出雲」』は、
『音楽詩劇 赤い繭』『音楽詩劇 御者パエトーン』に比べて
私にはなんか高尚すぎて良さがよくわからないっす……。
なんか死後の世界(冥府)を彷徨っているような雰囲気。