サイグレアニマン

サイケ、プログレ、アニメ、漫画、映画などの覚書

好きなもの目録 その415 長濱博史の惡の華

講談社が運営するYouTubeチャンネル「フル☆アニメTV」で
TVアニメ『惡の華』全13話が無料公開されてたんで、
十年ぶりに観返したっす。
私はアニメの『惡の華』が好きなんすが、
正直言って、当時のアニメファンなどから大不評だったのもわかる映像表現。
マニアックな邦画(実写)をロトスコープでアニメ化したような映像・演出なんで、
萌えアニメなどが王道の世の中では拒絶されるのもしょうがないのかな……。

十年前、2013年4月29日に書いた駄文を下記に転載するんですが、
当時と今の私では思考も少し変わっていると思うんで、
間違ったことが書かれているかもしれませんが……知らんっす。


アニメ『惡の華』最高に面白いと思うんだけど、私だけ?
惡の華』のアニメ、賛否両論っていうか酷評する声が大きいみたいっすが、
私は第一回を観て、久々にこの手のシリアスなアニメに出会えた!
ってな感じで、凄い面白く感じたんですが……。
まぁ、私の好みのモノって世間とズレているんで、
一般的なアニメ好きの反応が、否定的なのは理解出来ます。
なんか『TEXHNOLYZE テクノライズ』の第一話を初めて観たときの、私の反応を思い出したっす。
私は『TEXHNOLYZE』について、初めの頃は否定的だったんすよね。
制作者のオナニーアニメなんか観たくないみたいな。
キャラデザ、作画が好みだったんで観続けたんすが、
途中から凄く面白くなって観続けて良かったなぁ。と思ったもんです。
その『TEXHNOLYZE』の第一話に、『惡の華』の第一回が雰囲気がなんか似てる気がして……。

ロトスコープのキャラの評判が悪いみたいっすが、
沖浦啓之監督の関わったアニメや、STUDIO 4℃系のアニメ、
火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』の頃のキャラデザ――とか好きな方なんで
私にはなんの問題もないっす。

昔確か、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』で
庵野秀明監督が作画したパートだと思うんすが、
ロケットが発射された直後に、表面を覆っていた氷が剥がれ落ちるっていう、
人力で作画するのがとても大変なパートがあったんすよ。
んで、それから十何年経った頃に、ゴンゾがCG(コンピュータグラフィックス)で
大量の雪を降らせるデモ画面かなんか作って、
オネアミス』で大変だった作画が、CGで同じ様なモノが簡単(じゃないだろうけど)に出来ます!
みたいなことを言っていたと記憶してんすが。
それと同じようなことで、
手描きでシリアスなキャラを作画すると時間がかかって制作が大変なんで、
省力するためのロトスコープなんだろうと思います。
ロトスコープの方が、手間隙がかかって省力になってないかもしれませんが、
沖浦啓之監督や近藤喜文監督クラスの作画陣を集めて、何年もかけて制作するよりは)

まぁ、仲村佐和役の人のカメラ映りが悪くて、それがロトスコープに反映しちゃったのが
非難を受けている原因なのかな?
(まぁ、萌え系のキャラデザじゃないってのが大きいとは思いますが、
このアニメが萌え系のキャラデザだったら、私はこれほど興味を引かなかったかな)
このブログを前から見てくれている人(がいるのか知らないけど)は、
私が萌え系のキャラデザのアニメが、あまり好きじゃないってのは知っているかもしれませんが。
萌え系のキャラデザを全否定するわけじゃないんですが、そればかりになるのが嫌なんすよ。
今、ワンクールに何十本のアニメが放送されているのか知りませんが、
一、二本、せめて三本くらいは萌えキャラじゃない
変わったキャラデザの作品があってもいいじゃないっすか。
なんか今って、キャラデザが萌え系じゃないだけで否定されるんで
私が好みの作品(キャラデザ)って絶滅寸前なんすよ。
私が大好きな『プラネテス』が、もし萌え系のキャラデザだったらと想像すると背筋が寒くなるっす。

惡の華』のエンディングテーマが不気味で、精神がおかしくなりそうなんすが、
アヴァンギャルドな音楽が好きなんで、アニメの内容と合っていて良いんじゃないかと。
なんか、映画『けものがれ、俺らの猿と』のサウンドトラックに入っているらしいんすが、
けものがれ、俺らの猿と』――昔、テレビ放送されたの観たなぁ。
牛久大仏のこの世と違う別世界の印象と、なんか喫茶店? の場面があったなぁ。
くらいしか憶えていないんすが。
デヴィッド・リンチの映画みたいだったような。

2年1組の担任・下山の正体が糞虫ってことは、
この後、主人公達がザ・ムーンを操って……ことは無いっす。

上記が、私が『惡の華』の第一回を観た直後の感想です。
第二回以降を観て、あまりにも私の好みに直撃していて
ここ何年かで最も次回が楽しみでワクワクさせるアニメなんすが……。
そんな私と反比例するかのように、世間の評価が低いみたいなんで残念です。
長濱博史監督の『蟲師』より、私は『惡の華』の方が好きっすね、今のところ。
惡の華』みたいなアニメが、これからも制作されるといいんですが……。
世の中(アニメを観る層)は萌えアニメ以外は許さないような状況で、
ちょっと実験的なことをやると反発が凄い。


標題:クソムシアニメ 長濱博史の惡の華

分類:アニメ>テレビ

■題名:惡の華

監督:長濱 博史

原作:押見 修造

シリーズ構成:伊丹 あき

キャラクターデザイン:島村 秀一

作画監督
新田 靖成
谷津 美弥子
島沢 ノリコ

音楽:深澤 秀行

声優:
植田 慎一郎
伊瀬 茉莉也
日笠 陽子
上村 彩子
松崎 克俊 (※お笑い芸人 やさしい雨)

発表年:2013年

製作国:日本

評価:B ★★★○くらい

■雑記:
長回しや繰り返しや間で主人公の心境や状況や変化を表現してるので
物語の展開がゆっくりしてるけど、
中学二年生の春日高男が出来心から同級生で憧れの佐伯奈々子の体操服を盗む。
そのことを同級生で問題児の仲村佐和に見られ脅され、
春日は仲村と契約を結び命令されるまま
佐伯奈々子に告白することになり幸運にも付き合うことになるが……。
春日と仲村が教室に悪戯。佐伯が春日と仲村の関係に嫉妬し
春日が体操服を盗んだこともバレ別れを切り出すが佐伯は別れようとしない。
春日は事件の犯人なのか母に問い詰められ家出し、
仲村と二人で街を出て山の向こうへ脱出しようとするが
追ってきた佐伯共々警察に保護される。
春日は仲村や佐伯と疎遠になるが、
仲村佐和には自分が必要だと思い込み仲村宅を訪ね、
勝手に佐和の部屋に入った春日はノートを盗み見て佐和の本心を知る。
春日が佐和に再契約を持ちかけ、今後に起こる事件がフラッシュバック――
てな感じで第一部完で終わり、続きが無いまま原作漫画の途中までで終わるっす。

惡の華』は背景アニメって感じで、
何度も繰り返される登下校や街並みなどで田舎の閉塞感を表しているし、
同じ場所でも天気や日時や人物の歩き方などの違いで
心情や状況を表すっていう高度な演出をしている。
(視聴者に伝わらないとただ退屈な風景描写になるけど)
鏡やガラス窓を使った演出も上手く、
第一回で道路反射鏡(カーブミラー)を使った描写には感心したっす。
春日高男は同世代で誰も興味を示さない文学に浸っている自分を
他人とは違う特別な人間だと思い込んでいる自意識過剰なまさに中二病の少年なんすが、
理想の女神で天使に思える佐伯奈々子も、体操服を盗んだのが春日で嬉しいとか、
石ころだった自分を宝石に変えてくれたとか、
優柔不断で情けない春日に執着するメンヘラ。
仲村佐和は性格がねじ曲がってるんで、家庭に問題がある毒親育ちなのかと思ったら、
佐和の父も祖母も良い人そうなんで謎。
佐和は昔から一人でいることが多そうなんで、
幼少の頃、ギョギョおじさんに悪戯されたトラウマがあるとかかな? うそ
高男の部屋がこじらせた文学少年って感じが現れているんすが、
奈々子の部屋と佐和の部屋の対比も二人の性格がよくわかるようになっているかな。
主人公が好きな女の子の服を盗むのに、
その女の子と付き合うようになるってのが
『みゆき - あだち 充』を連想するんすが、
さすがに若松真人は服の下に鹿島みゆきのビキニを穿いてデートはしてないかな。
第七回で学校の教室を滅茶苦茶にするのが物語のピークなんすが、
教室を墨汁で塗りたくるのを見て
『線は、僕を描く』ってこんな感じの話だと思う。うそ
惡の華 - シャルル・ボードレール』のカバーのイラストの惡の華は、
オディロン・ルドンからきてるのかな。
『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 - フィリップ・K・ディック』もチラッと出てくるんすが、
カバーのイラストが『狂気 - ピンク・フロイド』っぽい。
物語の舞台は群馬みたいっすが、
私は長野に住んでいるんでやっぱ山に囲まれていて閉塞感があるっす。
あの山(壁)の向こう側には素晴らしい世界がある(または虚無のように何も無い)
に違いないって感じに共感。
ロトスコープのアニメに興味がある人は
花とアリス殺人事件 - 岩井 俊二』とかお薦めかな。
日本のアニメが品質の高い海外のアニメに抜かれるんじゃないか
っていう危惧を持つ人がいると思いますが、
テレビアニメで『惡の華』を放送しちゃうような変態な国は
日本以外には無いと思うんで当分大丈夫かな。
(アートなアニメ映画とかならヨーロッパあたりでも作れるだろうけど)


「オマエも
ロトスコープしてやろうか!」

 

分類:映画>邦画>青春映画?

■題名:惡の華

監督:井口 昇

原作:押見 修造

脚本:岡田 麿里

音楽:福田 裕彦

出演:
伊藤 健太郎
玉城 ティナ
秋田 汐梨
飯豊 まりえ
北川 美穂
佐久本 宝
田中 偉登
松本 若菜
坂井 真紀
鶴見 辰吾
高橋 和也
佐々木 すみ江
黒沢 あすか
村杉 蝉之介

発表年:2019年

製作国:日本

評価:C ★★☆くらい

■内容・雑記:
春日高男(伊藤健太郎)が群馬から埼玉に引っ越し
高校生になってる場面から始まり、
途中、高校生の春日の常磐文(飯豊まりえ)との出会いなどが差し込んであるけど、
1時間12分くらいまでがアニメ『惡の華』の最後までとほぼ同じ話なんすが、
アニメ版と違い間はあまり無くダイジェストのように展開が早く進む。
(春日達が自転車で山向こうに行こうとした時の警察に保護される場面は無い)
それ以降がアニメ版の続きって感じで、
仲村佐和(玉城ティナ)と再契約した春日が
女子達の下着を盗んで秘密基地に展示したり悪戯してることに
メンヘラをこじらせた佐伯奈々子(秋田汐梨)が嫉妬し
春日を無理矢理犯し秘密基地を燃やす。
夏祭りで春日と仲村が事件を起こし二人は別れ別れになり、
平凡な日常を送っている高校生の春日は人気者の常磐と仲良くなる。
偶然佐伯と再開した春日は自分に決着をつけるため
佐伯から知らされた仲村の現住所を常磐と共に訪ねる。

仲村佐和役の玉城ティナは熱演で
ファム・ファタールっぽさを出していて良いと思うんですが、
それに対抗する佐伯奈々子役の秋田汐梨と常磐文役の飯豊まりえが
普通の女子より可愛かったり美人だったりするんだろうけど
女神や天使ってほど飛び抜けていないかな。
私はどっちかというと木下亜衣役の北川美穂の方が好みかな。
飯豊まりえを見てるとなんか柄本佑賀来賢人を思い出しちゃうんすよ。
小説家志望の常磐文が飯豊まりえなんで、
将来はスタンドを使う漫画家の担当編集者になってると思う。うそ
実写映画版『惡の華』は展開が早いけど
テレビアニメ版『惡の華』と世界観というか雰囲気が似ていて、
漫画やアニメの実写化による違和感があまり無いと思う。


私は、原作漫画『惡の華』が話題になりアニメ化する前後くらいに
ちょっとだけ読んだと思うんすが昔のことなんで記憶に無いっす。
原作者の押見修造の映画化作品は
『スイートプールサイド - 松居 大悟』
志乃ちゃんは自分の名前が言えない - 湯浅 弘章』
を観たことあるんですが面白いです。